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無力と怒り

千聖の家に行っても会えない確証があった。学校か?無闇やたらに走った後に息を整えながらメッセージを送り電話をかける。 千聖なんで返信してくれん?どこにおるん? "俺に会いたくない?" この書き方は狡いって分かってる。千聖の文面からして今は会えないんじゃなくて、会いたくないんだと思う。けど、会わないと行けない。 また電話をかける。 数コールして、コール音が消える。 繋がった? 「……っ!、千聖!?!?千聖??どないしたん?今どこ??………………千聖??」 待ち望んだ千聖の声はしない。目立つ音もなく、時間だけが過ぎているようやった。 「……っ……くっ、 ずっ …………っ。」 所々嗚咽が聞こえてくる。 千聖。 「…………千聖、今どこにおるん? お願い、会いたい。」 「……………………………………っ………………大丈夫、だ、から…………」 やっと聞こえた千聖の声はガラガラであの嫌な記憶が蘇る。 「………だ、…大丈夫、だから………ずっ…来、ないで、……うっ、…………っ……会いたくない……」 そんな声でそんなこと言ったって。信じられん。ほんまに嘘が下手やな。 「……千聖。来て欲しいって会いたいっていいよるようにしか聞こえん。 なあ。千聖?ほんとは?俺にほんとに会いたくないん?…………千聖?」 「…うっ、……………あ、あいだい。……か、奏に会いたい……ずっ、。」 泣き声混じりに言う千聖を心底抱きしめたかった。 言われた所は、今では使われなくなった倉庫で、嫌な感じはもっと倍増していく。 学校からまあまあ近いとこやったけど、学校方面に向かっていてよかった。 倉庫に着いて、まず息を整える。 中に入ると埃っぽい感じとあの特有の嫌な匂いがした。 そんなに広くない倉庫の端の方に裸で蹲る……千聖がおった。俺の足音を聞いてこちらを向いた千聖。だが直ぐに逸らして下を向きガタガタと震えだす。 「……千聖?」 「…うっ、……」 泣き声と嗚咽。震える体。 そっと上着を脱ぎながら近づいて膝をつき、千聖の顔を上げさせて視線を合わせる。溢れる涙に、腫れ上がった目に所々にかかっている白く粘り気のある液体。 俺を見てさらに泣く千聖。そっと抱きしめる 「千聖………ごめんなぁ。来るのほんとに遅うて、ごめんなぁ。」 弱々しく押し返される体 「…っやだ、触らないで…………奏が汚れちゃう…」 泣きながらそんなことを言う千聖がとんでもなく愛おしくて、同時にこんなことをした奴らに言い難い怒りを感じる。 押し返す力はあまりにも弱くて、震えている。 涙も震えも止まらない千聖をしばらく抱きしめる。 「……奏、っう…っぐす、うぇ…っず…かな、でごめん。……っう、…」 びっくりした、謝られるなんて思ってもなかった。 「んー?何が?」 「……俺なんかでごめ、ん」 は? 千聖はそれを言うと、何かが切れたように意識を失った。 くっそ。……絶対許さん……… ほんとは自分が1番憎い。 なんで千聖が俺に謝るん。俺なんかって。俺の方がなんも出来てない。千聖を守ることも、助けることも、なんも。 無力な自分が1番憎い。いつだって怒りとは無力な事だ。 無力なんや。俺は。

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