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キスで
「ぅ、……グス」
あれから優斗君は何を問いかけても頭を撫でてみても反応しなくて
キーンコーンカーンコーン
こんな時間になった。
45分はっや。
「おい、伊織どーすんだよ。」
「授業始まる」
いや、そんなことは分かってますよ??
でもここで優斗君ほっぽったら人間腐らない??いや、腐るわ。
「んー、俺英語出来るしサボるわ。吉山によろしく言っといて~」
「へぇ?伊織英語できたっけ?」
「Appleくらいなら言えるんじゃない?」
アップルくらい余裕。
「…………はよ行け」
まだ小馬鹿にする凛と蒼空を見送って、優斗君と一緒に腰を下ろした。
「…………ごめんなさい。伊織先輩。」
「ん?落ち着いた?」
泣き声も止んで、不規則な身体の揺れも一定になってきてしばらくした頃に優斗君が蚊の鳴くような声で呟いた。
「…………ん」
それでもずっと裾は握ったまま。
「そっかー。」
「伊織先輩と凛先輩と蒼空先輩はどうしてそんなに仲が良いの?」
え、何?急に。
どうしてって、んーーー。
「そだねー、凛とは従兄弟なんだよね。母親同士が姉妹なの。昔っから保育園も小学校も中学校も一緒。蒼空は高校で会ったんだけど、すっごい大人しい奴で友達がいなさそうでさ?凛って意外と世話焼きだから話しかけたら凄い波長があってそれで仲良くなった!って感じかな。」
「波長……そっか。……俺は幼なじみが2人居て。千聖と礼って言うんだけど、特に千聖とは伊織先輩と凛先輩みたいに小さい頃から一緒だったんだ。だから何か俺は特別だと思ってたんだ。千聖は俺を頼ってくれるって、何があっても上手くやれるって。でも、何か俺は要らなくて邪魔者で…………そりゃ千聖が幸せならそれでいいけど…………でも、ぅっ……悔しくて…………ズズ」
マジか。ちさとちゃん、優斗君の幼なじみで大切にしてたのに、まさかの高校で長身君に取られた……と?
闇めちゃくちゃふけーじゃん!
「どうしたらいいのか分かんない」
顔をあげた優斗君は目を潤ませ、悲痛そうな顔をこっちに向けていた。
慰めの言葉をかけようと、そっと頭を撫でようと、「つらいね」って共感してあげようって思ってたのに。
俺の中で何かが動いた
「……え、……!?んっ、いおっ?…っまっ…んんー、クチュ、いぉ、りぃ、チュッ、」
長い間口の中を掻き回して、優斗君が堪えきれず涙を流し、どちらのものか分からない唾液をゴクッと飲み込んだ時、ようやく顔が離れる。
ペロッと唇を舐め取り、優斗君を見るとなんとも唆られる欲情した顔をしていた。
「はぁ…………はぁ、」
ん。可愛い。
……うん?可愛、い…………って
「…て、…え!?うわー!!!!!ご、ごごめん!!優斗君大丈夫!?!?!?」
力を無くした優斗君は俺にぐったりと寄りかかって大きく肩で息をしていた。
ん?待って?俺。
正直無意識だった。と思う。可愛らしい優斗君が俺の潜在意識的なものを動かした?うん、きっとそう。それとも元カノが泣いたり落ち込んでる時にキスで適当に済ます癖が抜けてないせいだろうか?だとしたらちょっとへこむ。
しかも相手は今日!さっき!出会ったばかりの『お、と、こ、の、こ』
何!?俺!?!?どうしたの!?!?!?
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