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いかない……で?
いや、落ち着け。落ち着こう。
ちょっと多めに息を吸って、
すーはー。
周りを見て、ほーら、こんなにも!すごく!とても!長閑じゃないか。
風に木が揺れて、…………まぁ風がない日もあるよね!うん!空には鳥が.........飛んでない日だってあるし?、大地には綺麗な花が…………誰だよ、踏んだやつ。ちゃんと下見て歩けよ!!花が可哀想だろ!
そして隣を見たら普通に元気な優斗君が………
そりゃ居ないよねー、あっれぇ?
待って、俺って、そっちだったの!?
確かに女の子見てもケバくてウザイなぁとか、地味で可愛げねぇとかその仕草気に触るなぁとか冷めたことばっか出てくるし、可愛い子と付き合っても性格くそみたいに悪いし、そこそこの奴と付き合ってもおもんないし、続かんかったけど!
俺の心の奥底が男を求めていたというのか!?
…………なわけないわー!!!!
とりあえず、水でも買おう。
ふふふこれがホントの水に流す。
うん。ごめん。パニックなの。これまでくっそ平凡だったからパニックなの。
「ゆ、ゆと君俺水買ってくるね」
すっと立ち上がる事は出来ずに少し不格好になったが何とか目線の位置を変えた。
歩こうとすると進行方向とは逆にクッと引き戻された。振り返ると、上気した頬と潤んだ瞳が俺を待っていて
「ゃ、いおせんぱぃ。いかない……で?」
俺の中で何かが崩れた。
てかもう崩れてたんだけど。
淡い期待と重く暗い後悔の予感
まだ戻れると頭のどこかでは分かっている。
「…………男を煽るといいことないよ?」
俯いて、それでも離さない裾が了承のサイン。
ほんっと、もしかしたら今までの俺は俺じゃなかったのかもしれない。
もう戻れない
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