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嘘か誠か、可か否か
渡り廊下でぐっと奥歯に力を込めて、堪えていた。
さっきから奏は溜息をついては窓の外を眺めていた。
「なぁ、いい加減に泣き止んで?」
「ご、めん」
「別に謝らんでいい。怒ってないし。」
「…ごめん、」
「やけんさぁ」
ついつい身体がビクッと跳ねる。
それを見て奏は盛大に溜息を吐いてはそっぽを向いてしまった。
「……………」
「……、…、………」
「……さっき、銀髪の奴が優斗が恋人やって公言したやろ?」
居た堪れない空虚な空間を壊してくれたのは良かったけど、なんかベクトルが違う
「…うん?」
「どげん思った?」
どうって、
「……凄い、とか?」
「何が凄いん?」
滑らかに奏の髪が揺れて、光を捉えて明るくなった。
それは、
「男」
奏が綺麗な声で一言だけ言って、こちらを向く
「え?」
「男同士やけど、どーどーとしとるのが?
凄い?」
咄嗟に目を逸らしてしまう
だって、俺には。無理だ。
「性別ってそげんも大事?たった2つしかなかとに」
確かに、そう、だ。
たった2つしかない、のに、なぜこんなに縛られる
たった2つのそれが、生きていく中の大事なことを決めてしまうことだってある
性別は大事
それはある種の真実で誠(まこと)、嘘ではない。
けど
性別が大事
となればそれは否であるとも思う。
「…大事、だよ。」
沈黙が痛い。
「……………そーやね。」
嘲るように一瞬見えた奏の顔は、サラッと流れた髪に隠されたあと、いつも通りの余裕が戻っていた。
「もうこの話はよか。ごめん、今回も俺の意地が悪かった。」
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