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彼女現る
「おはよ〜」
ばっと俺に視線が集まる。
異様な感じが一瞬で背中を走ってくる
……え?何??今、昼?
「こんにちは〜」だったのか、な!?
「夏目君やる〜!!」
「お前大人しそうに見えて意外とちゃっかりじゃん」
「いつから付き合ってたんだよ!!」
「え!?」
ば、バレた??え、なんで???
奏と付き合ってること優斗と礼しか知らないのに
「ん!?え!!、な、な、な何が??」
横に居る奏を見たいけど、これ見ちゃったら余計に
「ふっ」
っと奏が笑う気配がして、もしかしてこいつなのか!?と思考を巡らせる。
内心穏やかじゃないのに、次に発された言葉はとてもよく聞こえてきた。
「米村さんといつから付き合ってたの??」
「「は?」」
スパーク。あんど、パニック。
奏も
米村さん?
「あ、千聖君、おはようございます」
柔らかく女の子らしく笑いながら、米村さんが教室に入ってきた
ニッコリと笑って俺の腕に自分の腕を絡ませた
免疫がないから
「え、あ、は、…え??」
言葉が出てこない。
途端に「ヒュー!!!!!!!!!」と冷やかしが入る
突然のこと過ぎて、頭が追いつかない
「千聖。ちょっと、」
と反対側にいた奏が俺の腕を引っ張る
が
「ダメだよー!!奏くぅん」
「そうそう、米村さんと夏目君の邪魔したら」
「付き合って長いのに、恥ずかしくって、お互い知りませんけど〜?みたいな雰囲気出しちゃって!言ってくれたら応援するのに、ねぇ!みんな!」
「岡、今村、南…………離してくれん?
俺千聖に用あるんけど?」
岡さんと今村さん、南さんが奏を囲んでさらにギャラリーを盛り上げる。奏も女子に対して尻込みすることなく、バッサリと言った。え、怖い。怒ってる。
その時、グイッ!とこれまた俺が3人の女子と反対の方向に引かれて油断していた奏が俺の腕を放つ
「えっと、村主君。申し訳ないんだけど、私もっと千聖君と一緒にいたいです。仲がいいのは大変結構なんですけど、そろそろ恋人同士に譲って下さい。恥ずかしいけどもう皆に話せたので、遠慮したく、ない。です。」
うるうると瞳を湿らせて、恥ずかしそうに俯きながら、それでいてとても健気な雰囲気だった。
でも身に覚えのない俺からしたら、寒気と嫌悪と恐怖でしかない。
「うわー!!!!ラブラブじゃーーん!!」
「村主も遠慮しろよー!!」
「夏目も我慢してたんだろー?」
まるで奏が空気を読めない奴みたいに
でも俺も整理できなくて、未だに言葉が出ない。
3人が黒く笑っているのも気づけず、米村さんの腕を払うことも出来ず、まして何か弁解することも出来ず
顔を上げて奏を見る
「ヒュ」
喉がなる
怖いくらいの無表情
なぁ、嘘だろ?あんなに毎日一緒にいたじゃんか
まさかこんなこと信じてないよな?
奏はそのまま教室を出ていってしまった
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