103 / 108

居ないならいいじゃないですか

あれから俺と米村さんは、あれよあれよという間に囃し立てられて、朝の会で何気なく先生が言った「誰か2人資料室の整理してくれない?」という、なんともタイミングのいい雑用選抜に見事に選ばれた どこかに行ってしまった奏が気がかりすぎてそんなのに選抜されたことにも気づかなった 優斗も訳が分からないみたいで「どゆこと!????」と目と顔と首の角度を最大限に用いて全身全霊で訴えかけてくるが、正直こっちが聞きたい。 どういうことなんだ.........。 独白は音になったかも怪しく消えていった。 「………米村さん?」 「なんでしよう?」 一応手は整理をしながら戸惑いに流されつつ声をかける 振り返らずに手元の資料を束ねている米村さん 「…あの、えっと。ど、どういうつもりなの??」 「何がですか?」 何がって、え?? 「え、その、俺と米村さんが付き合ってるって」 「付き合ってるんです。」 …え??????? 付き合ってたっけ??…………いや!!!!!付き合ってない!!あまりに確信持って言って来られると勘違いしそうになるだろ! 「いやいやいや!付き合ってないよ!!ね!?!?」 「では、付き合いましょう?」 「はい??.........な、な、何言ってるの?」 微妙に話が繋がらない 「付き合ってないなら、付き合えばいいだけでは無いでしょうか??」 「それは好き同士がでしょ!?」 「嫌いですか?」 「え?」 「夏目君は私が嫌いですか?それとも好きな人が居るんですか?」 「えっ、それは………」 「居ないならいいじゃないですか。私でも。 付き合ってるうちに好きになるかもしれないですよ? 嫌いじゃないなら、いいじゃないですか。」 「困るよ」 「どうして?」 どうしてって……… 奏の顔が浮かぶ だって俺は奏が。 「わたしも困ります。夏目君、いえ、千聖君にお付き合いして頂かないと。」 何言ってんだろう。この人。 「とにかく、好きな人居ないなら私とお付き合いして下さい。」 言ってしまったら、でも、 でも、それよりも 思い違いなんてもうこりごりだ 「居る!」 「え、」 「好きな人居る!だからごめん。付き合えない」 「誰?、ですか??」 「えっ、それは...その」 「まさかとは思いますけど、村主くん?じゃないですよね」 え? 恥ずかしさで逸らしていた目線を戻すと少し怒っているような米村さんがこちらをじっと見ていた。 な、なんで。 「......え、な、」 「違いますよね!!!!?」 強く大きい声にドキリと心臓が痛い。 悪いことじゃないのに、隠したくはないのに 俺が弱いから怖くて怖くて触れてほしくない。 「......女の子なら。......女の子なら応援しますから、 村主くんじゃ困るんです。お願いです。違うと言ってください。」 「なんで、.........そこまで、?俺の好きな人なんて米村さんには関係ないよ、」 「そーやん?米村にはカンケーないよな?」 え、 「奏!?」 「......村主くん」 凍った空気が痛かった いつもは柔和で穏やかな雰囲気を作り出す奏が、 尖った氷のようで、俺すらも喉が乾くかのような感覚に襲われた。

ともだちにシェアしよう!