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世間の目は嫌悪に満ちている
数日前に俺たちが付き合ってることがバレた。
あの時は必死で、奏に「俺はな」なんて言わせたことが申し訳なくて、勢いもあって「俺も好き」なんて言ってしまった。
何となく心のつかえが無くなったような安心感と、やっと言えたという達成感すらその時はあった
米村さんは、顔を真っ赤にして出ていってしまった。
タイミングの悪い事に奏は福岡に戻らないと行けない用事が急遽入ってしまって、実は今日の夕方に帰ってきたばかりだ。
あの後教室に戻る時、ちょうど先生からその話を聞き、カバンも持っていたしそのまま帰ってしまった。
心細くなりながら、不安と速い鼓動に押しつぶされそうになりながらも、多分笑顔で奏を見送り、教室に戻ると、
そこは地獄だった。
泣いている米村さん、
それを取り囲む大人しいグループの女子達、
俺を睨みつけるいくつもの目と、
ところどころ聞こえてくる罵声と蔑みの言葉、
怒鳴りつける派手なグループの女子達と、
嫌悪の目で見るクラスメイト、
それを聞きつけて集まってくる野次馬、
止めようとする優斗に、
何も出来ず立ち尽くす俺。
気持ち悪い 夏目君が誘惑したらしい
自分の顔みて言えよ
村主君は脅されてる 裏切った 米村さんを弄んだ
ホモかよ ありえない 付きまとってる
奏君本気なのかな?
その日一日で俺を最悪の人間として陥れる話がいくつも出来上がってしまった。
俺が米村さんを弄びながら、奏にも手を出した。
奏を脅して、そばにいさせてる。
米村さんをの前で奏の方が好きだいいと罵った。
奏は迷惑してるけど、優しいから断れない。
話は膨らみ、尾びれをつけて、曲解しながら、
俺を苦しめ続けている。
やっぱり
そういう風に見られるのか………。
わかってた。わかってたのに。
救いなのは奏が悪く言われてないことだけだった。
優斗と礼には「一生のお願いだから」と、
自分に学校ではもう関わらないでほしいこと、
奏に何も言わないで欲しいこと、
を伝えた。
無視してごめん
泣かせてごめん
でも巻き込みたくない。
生活は一変するものなのだと、そう、冷たく思ったのをバカみたいにはっきりと覚えている。
奏と、別れよう。
止まらない涙と嗚咽がいつまでもいつまでも、続いていくようなそんな………
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