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第5話 ブルースター

「早く着きすぎたね。」 「そうだな・・・。」 さっきから僕を見ないでどこか遠くを見つめながらの会話。 そっけない。 せっかく・・・女の子になれたのに・・・。 手繋ぎたいな・・・。 指輪・・・。 僕は心翔にはめてもらった指輪を見つめながら心翔の熱い視線を思い出して恥ずかしくなった。 指輪は桃お姉様が恋人ならお揃いの必要だからと貸し出してくれた。 『これくらいしなきゃね。絶対その女心翔くんの事を諦めないわよ。』 これで諦めてくれたら良いけど・・・。 それにしても13時に待ち合わせは日陰が無いと直射日光はきついかな・・・。 あっ、桃お姉様に折り畳みの日傘持たされたんだ。 『駅前広場の噴水前って日陰が無いじゃないの?これ持って行きなさい。そして女の子アピールよ。負けんじゃないわよ。』 うんしょっと・・・。 服とお揃いかよ。 はぁ〜ッッ。 女の子の格好じゃ無かったら持てないよこの傘。 ひらひらのレースとかムリムリ。 「優ちゃん。大丈夫?」 「うん。ちょっと暑いかなぁ〜なんてね」 握っている傘の右手に心翔の左手が重なり向かい合う形になった。 「心翔?」 「優ちゃん。ごめんな・・・動物園行けなくて・・・」 「だっ・・・ウゥっ・・・ウゥ・・・」 『大丈夫だよ。心翔と一緒ならどこに居ても楽しいよ』 という予定でした。 はい。 お決まりですか? また話終わる前てかまだ1文字しか発して無いのに唇を奪いにきましたか? 心翔はしっかりもう一方の手で後頭部押さえているから僕は心翔から離れられない。 「まっ・・・はぁ・・・だぁ・・・うぅッ・・・。」 もう頭がクラクラしてきたよ。 持っている傘にチカラが入らない。 僕が抵抗しないと分かるとそっと頭から手を離して僕の左手に指を絡めて握ってくる。 ズルいよ。 こんなクラクラする時に僕がして欲しい事をしてきたら心翔だけしか考えられない。 心翔大好き。

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