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第10話 ブルースター

「君、大丈夫?」 あれ? 僕・・・・。 気分悪くなってうずくまってしまったんだ。 「すみません。大丈夫です。さっきの人は?」 「追い払ったよ。そこのベンチまで歩けるか?」 僕は頷いて立ち上がり歩こうとしてよろけた。 そんな僕をチャラ男から助けてくれた男の人が支えてベンチまで連れて行ってくれる。 「顔色悪いけど本当に大丈夫?」 「はい。ご親切にありがとうとございます。後、変な男の人から助けてくださってすみません。ぼ・・・私羽野優と言います。」 いつもなら、自分から名乗る事ないのに・・・。 この人凄く暖かい感じがする。 「僕は西山心輝(ニシヤマシキ)。彼氏と待ち合わせ?」 「えっ?」 「えっ?指輪してるから彼氏とかなと思ったんだけどな?」 そっか、指輪。 心翔・・・どこ? チャラ男に掴まれた腕は少し赤くなっている。 それを見ていたら涙が溢れてきた。 心翔はどうして僕の傍に居ないの? 『消えろ』 心翔はやっぱり僕に消えて欲しいの? 高橋さんみたいに本物の女の子がいいの? 「ヒクッ・・・ま・・・な・・どこ?」 「優ちゃん?」 西山心輝が僕の事を優ちゃんと呼んだ。 『優ちゃん、好きだよ』 優ちゃんと呼んでいいのは心翔だけなんだ。 勝手に呼ぶな・・・。 「お前何してんの?」 「君は?」 心翔が僕の腕を引っ張り立たせて腕の中に引き寄せた。 「優ちゃんは俺のだ。」 「ヒクッ・・。西山さんは変な男から僕を助けてくれたんだ。心翔どこ行ってたの?」 僕は心翔の腕に顔を埋めた。 そしてこの時女の子の格好をしている事を忘れて僕と言ってしまった事に気付いていなかった。 「彼氏が来て良かったね。」 「優ちゃんを助けてくださり、その早とちりしてすみませんでした」 「いいよ。でもちゃんと見てないと可愛い彼女、誰かに奪われちゃうかもな。クスッ」 西山心輝は意味ありげに笑ってどこかへ行ってしまった。 心翔は高橋さんが最後のお願いで心翔を諦めると言うから駅の改札までついて行き見送ったと話してくれた。 僕がクラスの女の子達と話していたから大丈夫だと思い何も告げずに離れた事を心翔は謝ってくれた。 冬空くん、茜ちゃん、譲くんはさきに帰ると言って早くから帰って行ったらしい。 高橋さんが諦めてくれるなら僕はモヤモヤしなくていいよね。 僕には心翔だけだから・・・。

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