僕は心翔の後についてリビングへ入ったけど誰もいなかった。 「ここに座って待ってて優ちゃん」 「あっ・・・うん」 心翔はキッチンの方へ行ってしまった。 1人残された僕は凄く不安で今にも胸が押しつぶされそうだった。 心翔のお母さん、怒ってるのかな？ 「どっちでもいいから母さん」 キッチンから心翔の声が聞こえてきた。 「でもね。やっぱりピーチタルトの方がいいかしら？」 ピーチタルト？ 会話を聞いてる分には心翔のお母さんは怒ってるようには思えなかった。 むしろ普通な感じ？ 「お待たせしちゃって・・・あらっ？優月ちゃん？」 キッチンから出てきた心翔のお母さんが僕の顔を見て名前を呼んだ。 僕の名前をどうして知ってるんだろ？ 取り敢えず挨拶はしなきゃダメだよな。 「あっ、初めて八坂優月です」 「八坂？でも優月ちゃんよね。おばさんの事覚えてない？優月ちゃんもしかして、おばさんの娘になってくれる決心ついたの？」 えっと？ あまりにも早口なもんで頭の中がグルグルして処理しきれない。 「母さん。優ちゃんは八坂の苗字じゃないだろ？優ちゃんじゃないから・・・」 「そうよね。優月ちゃんは、羽野の苗字よね」 「あっあっ・・・佐伯のお母さん？」 「あらっ、やっぱり優月ちゃん？」 僕はコクコクと頷いた。 あまりにもビックリし過ぎて声を出すのを忘れていたからだ。 心翔も手に持っていたグラスを床に落としかけていた。 「嘘だろ・・・。優ちゃん？本当に・・・？」 僕もビックリし過ぎて思考が停止仕掛けていた。 「心翔も優月ちゃんも気づいてなかったの？」 「あっ、嫌。てか、母さんどうしてわかったんだよ」 「分かるわよ。優月ちゃんは私の娘なんだからね」 「えっと・・・僕は前から言ってますが男です」 心翔のお母さんは僕に会うたびに嫁に来て娘になってと言っていた。 あの頃、心翔のが女の子みたいだったのにどうしてなんだろうと不思議に思ってたよな。 心翔のお母さんの冗談かと思っていたが真剣に言ってるのか？