122 / 903
第3話 再会 Side心翔
俺は優ちゃんが落ち着くまで待って下に降りた。
リビングに居るかと思った母さんはまだキッチンで何かしているみたいだ。
優ちゃんをソファに座らすとキッチンに母さんを呼びに行った。
「母さん、彼女連れてきたからこっちに来てくれ」
「やっぱり、ピーチタルトのがいいかしら?」
まだ悩んでんのかよ。
それって重要な事なのか?
自分の母親のたまにこんな所がイライラする。
「どっちでもいいから持って俺このグラス持つからさ」
「そう、お願いね」
なんかようやく決めたらしい。
嬉しそうにトレーに乗せてリビングへと向かってる。
そして母さんは優ちゃんを見てまたおかしな事を言い出した。
『優月ちゃん』そう呼んでたのは昔住んでいた街で仲良かった羽野優月くんの事を言っているのだ。
優ちゃんが自己紹介で八坂と名乗ってるのにまだ優月ちゃんだと煩く言っている。
勘弁して欲しいよ母さん。
優ちゃんが困った顔してるしさっきのオレ達の行為を母さんに見られて動揺してるんだからこれ以上優ちゃんを動揺させんなよ。
そんな優ちゃんから『佐伯のお母さん?』
えっ?
佐伯は俺の前の苗字。
忘れてた。
クラスの皆んなに羽野と名乗っていたんだ。
優ちゃんは羽野は前の苗字だと教えてくれていた。
あまりにもビックリして持っていたグラスを床に落としかけた。
俺はしばらく固まったままで隣で母さんが私の娘とかまた騒ぎ出した。
今は女の子の姿をしているのに母さんは男の羽野優月だとどうしてわかったんだ?
俺は・・・。
ずっと気づかなかったんだぞ。
なんか悔しい気がしてきた。
母さん本気で優ちゃんを俺の嫁にしたいのか?
昔から言い続けている。
それから俺は母さんに優ちゃんの事情を説明した。
俺は両親が亡くなったとだけしか言えなかった。
今も俺にしがみついて震えている優ちゃんにあの事を思い出させたくなかった。
その後母さんはお義父さんにまで話して俺が良かったら優ちゃんが嫁に来るのイイみたいになってる。
俺は家族に認めてもらえて嬉しいよ。
でも優ちゃんの家族にも認めてもらわないといけない。
優ちゃんの今のご両親にちゃんと説明しないとお母さんやお義父さんからじゃなく俺から話さないとダメなんだ。
ともだちにシェアしよう!