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第10話 夏休み

身体が重たい。 周りを見渡せば壁には大きな睡蓮の花の絵が飾られている。 部屋にはパイプベッドだけで僕はパイプベッドの上に座っていた。 首には首輪をされていて鎖はパイプベッドの所に繋がれている。 目に入る光景に僕は絶望した。 さっきまで大切な人と愛し合っていたのは全て夢だと思ったからだ。 大切な人・・・誰? 俺に大切な人なんていた? 大切に思った人は何も言わずに居なくなった。 そして部屋の外から足音が聞こえてくる。 それに反応して俺はベッドの隅に膝を抱えて小さく丸まり座っていた。 身体は血の気が引いてガタガタと震えだす。 怖い。 助けて・・・。 そう思っても誰も助けには来ない。 頬に涙が伝う。 ドアの前で足音が止まる。 「ヒィッ・・・」 僕は小さく悲鳴をあげた。 入ってくる。 彼が・・・。 怖い。 「ゆ・・・」 白い天井から声が聞こえてる? 「優ちゃん」 ハッキリと聞こえた。 大切な人の声。

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