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第1話 夏休み 夜空
「手を合わせてください。いただきます」
ウサちゃんが言い出した。
なつかしい。
高校生になってするとは思わなかった。
「いただきまぁ〜す」
全員で声を揃えて言ったらなんか楽しくなってきた。
テーブルには、ボロネーゼ・ポテトサラダ・コーンスープといった料理が並べられている。
ウサちゃんと冬空くんが好きな料理でよく2人で作ると言っていた。
僕もボロネーゼは大好き。
「ウサちゃん。ボロネーゼ凄く美味しい。お店のより美味しいかもしれないよ」
「お店のは大げさですよ。でも嬉しいです」
「でも、凄いな僕は料理出来ないからね」
冬空くんもウサちゃんも料理ができるなんて凄いな。
僕は包丁が怖いから料理出来ない。
「僕も作ってみたいな」
「ゆづくん。明日、朝ごはん一緒に作る?」
「えっ、いいの?僕でも作れる?」
「うん。簡単なのにするから平気だよ」
包丁怖いけど頑張りたい。
いつ迄も怖い物から目を逸らしてたらダメなんだから前に進まなきゃな。
「心翔も一緒に作ろうよ」
「そうだな」
やっぱり心翔の様子が少しおかしい。
口数が少ないし、なんだかそっけない態度な気がする。
「そうだ。心翔のお母さんが言ってた夜空の星とかこの後見に行かないか?」
「いいな。浜辺から見ると凄く綺麗らしいんだよ。場所教えて貰ったから皆んなで行こう」
冬空くんと話をする心翔はニッコリと笑っている。
僕が話しかけたら冷たい感じだった。
心翔、やっぱり気にしてるの?
聞けない。
聞いて信じてもらっても僕は2学期になったら心翔とは別れないといけないんだ。
だったら、このまま嫌われた方が心翔を傷つける事なく別れられる?
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