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第6話 夏休み 夜空

「注射より痛くない。ブツブツ」 ウサちゃんがずっと同じ事を言ってるもんだからなんだか呪文のように聞こえてくる。 「宇佐先輩。冬空は待ってくれるんじゃないんですか?」 ウサちゃんは冬空くんの顔をチラッと見た。 冬空くんは、ウサちゃんの腕を掴み自分の腕の中におさめて頭を撫でた。 「龍。俺待つよ」 「冬空・・・・。ありがとう」 「龍と気持ちが通じ合ってるだけで俺は幸せなんだ」 冬空くんは、何年もウサちゃんに片思いしてたんだもんね。 ふと見上げた満点の星空に、一筋の光が見えた。 「あっ、流星だ」 僕の声に皆んなが星空を見上げる。 するともう一つ光の筋が見える。 「優ちゃん綺麗だな」 「うん。綺麗だね」 気付いたら心翔が僕を後ろから抱きしめるように座っていた。 「優ちゃん願い事した?」 「あっ、忘れてた」 心翔の方に顔を向けるとそのまま軽くキスをされた。 「心翔、ズルいよ。僕の心臓が壊れちゃう」 「それは、俺も同じだ」 心翔は、僕の首に顔を埋めた。 「心翔・・・」 「ずっと傍にいろよ。優ちゃん。俺から離れたら許さない」 心翔は僕が別れようとしているのは知らない。 きっとあの出来事が無かったら僕は凄く嬉しくてスグに離れないと言っていただろう。 胸が苦しい。 今の僕は心翔の言葉一つでドキドキしたり苦しくなったりする。 僕は心翔が好きだから・・・。 ずっと傍に居たいんだ。 苦しいよ。 離れたくない。 「うん。離れたりしないよ心翔大好き」 心翔は僕の言葉に返事をするかの様にギュッと力強く抱きしめてくれた。 ごめんね心翔。 僕は心の中で何度も謝った。 何度も・・・・。

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