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第11話 暗闇 Side心輝
「心輝」
ゆづくんは俺の前に立ち弱々しく名前を呼んだ。
俺は下を向いたまま返事をしなかった。
優しくすればまた好きだと言ってくるかもしれないと思ったからだ。
記憶を失くして俺を好きだと錯覚しているゆづくんにはもう優しくなんか出来ない。
「ヒクッ・・・お願い・・・嫌わないで・・・・」
久遠なら抱きしめているだろうが俺は久遠でも無いしゆづくんを好きなわけでも無い。
あの最低な兄さんと同じ血が流れている奴だ。
「さっきも言ったが俺はゆづくんを・・・」
クソッ。
なんだよ。
好きじゃ無いって言えばいいんだよ。
なのに言えなかった。
ゆづくんの泣き顔をもうこれ以上見たくなかったからだ。
「もういいから、寝ろよ。朝早くにあの部屋に戻らないと兄さんが怒るからな」
「ヒクッ・・・・・」
「ウザイから泣くな」
ゆづくんはベッドに上がると隅にうずくまり肩を震わせ泣いている。
抱きしめて頭を撫でてやりたいが気がないのにそんな事をしたら余計に傷付くんだ。
分かってるけど・・・。
俺は手を伸ばしてゆづくんの頭を撫でていた。
「心輝・・・・・ごめんね」
「分かったから泣くなよ」
ゆづくんは小さく頷くと暫くしたら眠ったのか寝息が聞こえてきた。
痩せ細り今にも壊れてしまいそうなゆづくん。
早くココから逃げないとゆづくんが本当に壊れてしまう。
後1週間の辛抱だからそれまでは絶対に兄さんからこれ以上酷い事をされないようにするからだから生きて・・・・・。
それより起きたら何か食べさせないとな・・・・・。
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