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第6話 救出

心輝の作ってもらった粥を全部食べ終わった時の事だった。 「動くな!」 部屋の外から知らない人の怒鳴り声が聞こえてくる。 「コイツに怪我させたく無かったらそこをどけ!」 「俺は大丈夫だからそこにいろ」 あっ、心輝の声だ。 でも怖い。 「黙ってろ」 「分かったから心輝さんにそれ以上傷をつけないで下さい」 心輝が怪我したの? ドアが開いて知らない人が1人部屋の中に入ってきた。 心輝は両手を後頭部に上げさせられてナイフを首の辺りに突き付けられていた。 知らない男の人が3人。 1人は俺に近づいてくる。 そして心輝を脅してる男とその背後にドアの辺りで見張りの様子を伺っている男がいた。 「心輝・・・」 俺は膝の上に置いていたトレーがあるのを忘れて立ち上がってしまった。 ガシャン。 「動かないでそこに居てゆづくん」 「心輝・・・。イヤだ」 震える足・・・・・。 心輝が痛い目に合うのはもっと怖い。 「優ちゃん・・・・・」 俺に近づいて来ていた男の人が俺を見て泣きそうな顔でそう呟いた。 「取り敢えず心翔。ゆづさんを連れ出せ」 「はい。宇佐先輩」 宇佐先輩って呼ばれた人は俺を知ってるの? いきなり毛布に包まれて抱きかかえられた。 抵抗しようとしたけど俺よりも力が強くて動かないようにさせられてしまった。 「心輝は・・・・・。心輝は一緒?」 「一緒に連れてくよ。安心して眠ってて優ちゃん」 「うん、わかった。でも俺はゆづだよ。優ちゃんじゃないよ」 そう言うと心翔とか呼ばれていた人は悲しそうに俺を見つめて来た。 「そうだな」 なんだかとっても寂しそうな声だった。 けれど何処か優しくて安心できるような感じがした。

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