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第10話 救出
心翔って人はベッドの傍で立ったまま俺を見つめていた。
「あの・・・・座ってください」
「あっ・・・うん」
心翔って人は近くにあったパイプ椅子を持ってきて俺の傍に座った。
何か話あるのかな?
そうだあの部屋から連れ出してくれたお礼を言わなきゃだ。
「えっと・・・。部屋から連れ出してくれてありがとうございます」
「うん」
スッと腕が伸びてきて俺の頬に触れた。
俺は身体がビクッと反応して強張って目を瞑ってしまった。
心翔って人は俺の反応ですぐに頬から手を離した。
「ごめん。やっぱり帰るわ」
そう言って席を立って俺を見ないまま入り口の方へと向かって歩き出した。
「あのっ・・・待って下さい」
俺は何故だか思わず引き止めてしまった。
引き止めて何を話せばいいか分からないけどこのまま心翔って人が帰ってしまうのが嫌だった。
「えっと・・・もう少し傍にいて貰えませんか?」
心翔って人は立ち止まりまた俺のそばの椅子に無言で座った。
何故だかずっと傍にいて欲しくてずっと離れたくない気がする。
「あの、俺とは友達ですか?」
友達と言う言葉が胸をチクチクと刺す。
どうして苦しくて切なくなるの?
気のせい?
心翔って人は膝に置いていた手をギュッと握って下を向いてしまいポツリと呟いた。
「あぁ、ともだち」
友達。
なんだろ凄く胸が苦しくて目から涙が溢れそうになる。
こんな泣いたらダメだ。
けど俺の目から次から次へと涙が頬を伝いこぼれ落ちていく止めれない。
俺はこんな苦しくて切ない感情なんて知らない。
心輝が痛い事されてもこれ程までに苦しくなかったのに心翔って人が俺を『友達』と言っただけなのに・・・・・。
俺は気付いたら声をあげて泣いていた。
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