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第6話 救出 side心翔
エレベーターの表示が地下2階で点灯してドアが開いた。
心輝が言うには鍵のかかったドアの向こうに入ると優ちゃんが居る部屋の前に見張りは2人。
ドアの鍵を心輝から預かっていた。
エレベーターを下りてドアの前に立ち鍵を開けゆっくりと見張りの様子を伺いながらドアを開けた。
確かに優ちゃんが居ると思うよ部屋の前に見張りは2人。
冬空が西山心輝を盾にして前に進む。
「動くな!コイツに怪我させたく無かったらそこをどけ!」
見張りが躊躇している。
「俺は大丈夫だからそこにいろ」
西山心輝がそう言うと見張りは言われた通りに動く事はなかった。
「黙ってろ」
西山心輝は初めから怪我をするつもりだったのか?
冬空が仕方なく西山心輝の頬に切り傷をつける。
「分かったから心輝さんにそれ以上傷をつけないで下さい」
それを見た見張りが入り口から離れた。
「壁に向いて立って手を後ろにしろ」
俺と宇佐先輩で男達が動けないように足首をロープで縛り手も同じように後ろで縛った。
暫くは動けないだろう。
部屋のドアを開けて中を見るとベッドに誰か座っている。
誰かじゃない。
優ちゃん・・・・・。
俺がゆっくりと優ちゃんに近づいていくと優ちゃんはドアの辺りを見ていた。
「心輝・・・」
そうだった・・・優ちゃんは俺を覚えていないんだ。
優ちゃんは膝の上にあるトレーを床に落として立ち上がった。
ガシャン。
「動かないでそこに居てゆづくん」
「心輝・・・。イヤだ」
震える優ちゃんは西山心輝の事が心配なんだろう。
俺は複雑な気持ちだった。
「優ちゃん・・・・・」
優ちゃんは青い顔をして痩せ細り服は着ていなかった。
それに身体中に打撲や細かい切り傷があった。
どうしたらこんな酷いことができるんだ?
西山心輝の身体も酷いと思ったが優ちゃんはそれ以上に傷だらけで見ていたら胸が締め付けられて涙が目に溜まる。
「取り敢えず心翔。ゆづさんを連れ出せ」
「はい。宇佐先輩」
そうだ色々と考えるのは優ちゃんをこんな場所から連れ出してからだ。
俺は持っていた毛布でそっと優ちゃんを包むとそのまま抱き上げた。
なんだよこれ・・・・・軽すぎんだろ。
優ちゃんは降ろして欲しいのか俺の腕の中で暴れたが以前の様な力はなかった。
「心輝は・・・・・。心輝は一緒?」
「一緒に連れてくよ。安心して眠ってて優ちゃん」
「うん、わかった。でも俺はゆづだよ。優ちゃんじゃないよ」
心輝を心配する優ちゃん。
今はゆづなんだよな・・・・・。
「そうだな」
本当に俺を忘れたんだなと思うと胸がつまりそれ以上は何も言えなくなってしまった。
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