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第8話 救出 side心翔

診察中で俺達は聖兄さんに案内されて小会議室に通された。 そこに居たのは長男の宗輔兄さんだった。 「お前らあまり無茶をするんじゃない。聖と穂波も何を考えてるんだ。でも無事でよかった」 3人の兄弟の中で一番綺麗な顔立ちをしていて優しくも見えるが怒ると誰よりも怖い。 「心翔、遥からの伝言だ。優月君が今の状態で無理に思い出させる様な行動や言動には気をつける事。特に困惑する様な事はするなとの事だ」 「わかった」 分かってるが・・・。 宗輔兄さんは、母さんからの話をし始める。 取り敢えずは、お祖父さんと伯父さんが動いてくれるらしくて解決するまでは西山冬樹に接触しない様に言われた。 後は、心輝が入院中までに解決しなければ暫くは久遠の家で同居すると母さんが言ってるらしくお義父さんは許可した。 相手のご両親には明日にでも会って説明をすると言っている。 心輝と同居は嫌だが優ちゃんが心配するような事は今はしたくないから仕方がない。 優ちゃんの家に行かれるよりは俺と生活してもらう方が安心出来る。 一通り説明が終わると宗輔兄さんは仕事に戻っていった。 部屋には重たい空気が漂っている。 優ちゃんのあの状態を見たら笑って無事で良かったなんて言えない。 想像以上の姿をしていた。 心輝よりも酷いとは聞いていたがあの無数の傷。 背中の傷が酷そうだったが平気で傷をつける西山冬樹はどうしても許せない。 「ゆづくん、早く良くなるといいな」 冬空がポツリと呟いた。 「そうだな」 今は早く優ちゃんの身体の傷を治すのが先だよな。 「じゃあ、俺は優月くん診察してくる。傷もだが体調も心配だからね」 「頼むな。聖」 「わかってるよ。颯斗」 聖兄さんは優ちゃんの病室へと向かった。 俺も優ちゃんの傍に行きたい。 「久遠、病室の前で待ってみたら?会って良いって言われたら会えばいいんじゃないか?聖ならきっと会わせてくれるよ」 穂波先生が優しく俺に言ってくれる。 「俺、行ってみます。今日はありがとうございました」 駄目だと言われたらまたこの部屋に戻ればいい。 俺は皆んなにお礼を言うと優ちゃんの部屋に急いで向かった。

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