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第9話 救出 side心翔

俺は病室の前で立って色々考えていた。 病室の中から聖兄さんが出てきて中に入って大丈夫だと言われたので俺は病室の中に入って行った。 優ちゃんはさっきよりも落ち着いてるように見えるから俺は少しだけ安心をした。 「えっと・・・。部屋から連れ出してくれてありがとうございます」 胸が苦しい。 目の前に会いたくて会いたくてずっと求めていた愛おしい人が居るのに、触れることや抱きしめたりも出来ない。 けど優ちゃんを見てると身体が勝手に動いてしまう。 心が優ちゃんを求める。 無意識で優ちゃんの頬にそっと触れたい。 触れると優ちゃんの身体がビクッとなって強張り目をつぶっている。 触れられたら怖いよな・・・。 優ちゃんと居たら触れたなる。 「ごめん。やっぱり帰るわ」 優ちゃんはどこにも行かないからと言い聞かせながら俺は座っていた椅子から立ち上がると入り口へと向かった。 「あのっ・・・待って下さい。えっと・・・もう少し傍にいて貰えませんか?」 俺には嬉しい言葉だったが次、優ちゃんに触れてしまったら止める事が出来ないかもしれない。 でも優ちゃんが・・・。 俺はまた優ちゃんの傍に座った。 「あの、俺とは友達ですか?」 友達か・・・。 胸に刺さる言葉。 付き合ってるなんて今は言えないけどやっぱり別れたわげじゃないから優ちゃんに記憶がなくても言いたくない『友達』と・・・。 俺は膝に置いていた手をギュッと握って下を向いてしまいポツリと呟いた。 「あぁ、ともだち」 やっぱりダメだ。 胸が苦しい涙が目から溢れてくる。 泣いたら優ちゃんに変に思われるから泣いたらダメだ。 泣くのを我慢していると優ちゃんの泣く声が耳に入ってきた。 俺は顔を上げて優ちゃんを見ると目からポロポロ涙をこぼして声を上げて泣いている。 優ちゃん・・・。

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