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第10話 救出 side心翔

こんな泣いてる優ちゃんに何もするなってのが無理だ。 友達なら普通に何故泣いてるのかとか励ましたりするんだろうが優ちゃんは俺の・・・。 俺の大切な人。 「ごめん」 怖がらせるかもしれない拒否られるかもしれないけれど俺は・・・・・。 ゆっくりと優ちゃんの腕を引っ張り俺の胸の中に抱き寄せ背中には触れないように腰に腕を回して抱きしめた。 優ちゃんの温もり1度無くしてしまったこの温もりをまた感じることが出来る。 それは、壊れてしまうかのようなそんな感じで優ちゃんが泣き止むように触れて頭を撫でた。 優ちゃんは俺の胸に顔を埋めてさっきよりも声を上げて泣いている。 優ちゃんが愛おしい。 「優ちゃん・・・・・。好きだよ」 俺は優ちゃんの頭に触れるだけのキスを落とした。 「お待たせって、こらっ心翔。何してるんだ?混乱させる様な事をするなと遥に散々言われてだろ?」 点滴の用意をして聖兄さんが戻ってきた。 「無理」 「我慢を覚えようか?心翔くん」 優ちゃんが手に力を入れて離れようとするが前より力が無くなっているから俺はあまり力を入れずに離れようとするのを止めた。 「あの・・・離して下さい」 「嫌だ」 優ちゃんは泣き止んでるんだろうか? 俺以外に優ちゃんの泣き顔なんか見せられない。 でもそろそろ解放しないと点滴ができないから俺は腕の力を少し緩めて優ちゃんの顔を覗き込んでみたけど下向いてるから見えない。 「優ちゃん、泣き止んだ?」 「あっ・・・うん」 泣き止んで良かったと微笑んでると優ちゃんが少しだけ上を向いて俺の顔を見つめてくる。 こうして腕の中で優ちゃんを見るとあの日と変わらない位可愛い。 やっぱり離れたくないが今日はこれ位で我慢だと言い聞かせ俺は優ちゃんの頭を撫でると立ち上がった。 「じゃあ俺帰るわ。またな優ちゃん」 「あっ・・うん。またね」 優ちゃんの笑顔が見れた。 俺につられて笑ったのかもしれないが嬉しい。 「明日、ちゃんと学校は行けよ」 「わかってるよ。優ちゃんを頼むよ。聖兄さん」 俺は病室を出た。

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