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第3話 動物園 side心輝

直はゆっくりとベンチに座った。 俺もその横に座ると直を自分の腕の中に引き寄せて強く抱きしめた。 「痛い」 「痛い?いつもと変わらない力加減だけど?何故痛がる?」 「そっ・・・・・それは・・・・・・」 ガタガタと直が震えだして俺の服をギュッと握りしめる。 「それは、誰かに暴行されたからじゃないか?俺が気付かないとでも思っていたのか直?」 「ふっ・・・し・・・心輝」 「何があった?怒ってるんじゃない。ちゃんと話してみろ?」 直には怒ってないが直を傷つけた奴らに腹が立って分かった時点で同じ様にしてやりたかった。 直はゆっくりと話してくれた。 以前からいじめられていた事。 ゆづ君が庇って入院してしまった事。 けどゆづ君が庇ってくれてからは昨日だけ暴行を受けたという事。 「本当に昨日だけなんだよな?」 「うん。昨日だけだよ」 俺は直の言う事を素直に聞けないでいた。 でも直が昨日だけだよって言うならそれを信じようと思っていた。 「直、また何かされたら俺に言え」 「でも・・・・・迷惑かかる」 「迷惑って思うのは直だけだろ?俺は一切思ってないから分かったか?」 「ごめんね。心輝」 「ありがとうだよ」 「あっ・・・うん。ありがとう心輝」 直の頬に伝う涙を唇でそっと触れた。 直の事になると感情を抑えが利かなくなってしまう。 フッと頭を過るのは今迄にして来てしまった人達の事。 きっと大切なのが傷付けられて悔しい思いや悲しい思いをさせてしまった。 直に出会ってからより一層そう思ってしまう。 本当に俺はクズみたいな生き方をして来たんだよな・・・・・・。

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