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第4話 それぞれ

けど、どうしても手を離すことが出来ない。 周りもザワザワとするが誰も日野を助けようとはしない。 僕があの『ゆづ』だと噂を肯定してしまっている形になっていた。 「分かった。クマちゃんのお願いだから聞くよ」 僕が手を離すと日野は腕を押さえてその場に座り込んだ。 まさか、直の代わりに殴った相手にヤられるなんて思ってもいなかっただろう? 「日野さ、強いんだから弱い者苛めんの止めたら?」 「何・・・言ってんだよ?」 「周りも気付いてないと思ってるの日野だけだよ」 日野は教室中を見渡した。 クラスの生徒達が日野を冷たい目で見ていた。 だが日野に言えなかったクラスの生徒達もあまり変わらないんだけどな。 「日野が変われたら仲良くなれそうなんだけどな?」 「なんだそれ?」 「そのうち分かるんじゃない?早く冷やさないと痛み取れないぞ」 日野はクマちゃんに立たせられると教室から出て行った。 「ごめん。騒ぎになった」 僕は皆んなに頭を下げた。 怒りで自分をコントロール出来ないなんてまだ僕もダメな人間だ。 やり過ぎたと反省もした。 暴力では解決なんて出来ないって散々バカして分かっていた事なのに・・・・・・。 「あの、八坂君。ありがとう注意してくれて私達は怖くて言えなかった」 誰? クラスメートだと思うけどまだ覚えていない。 「学級委員の早川さんだよ」 冬空君が耳打ちしてくれた。 「うん。僕も怖かったよ」 なんて笑うとクラスの生徒達の動きが一瞬止まった。 『『えっ!!!!!』』 嘘だろうと言わんばかりに皆んなが同じ様に言ったんだ。 僕も怖いのは怖いよ。 日野がどの位強いかなんて分かんないんだもん。 その側で心翔は顔を青くしていて、ウサちゃんと冬空君が爆笑していた。 心翔、ごめんね。 僕はいつも心翔に心配させてるよね。 言うことも聞かないもんね。 本当にごめんね心翔。

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