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第9話 それぞれ

僕の全てが蕩けてしまう前にエレベーターが1階に着いて扉が開こうとしている。 「ううん!!!!!」 僕の身体は動けないでるそれは、心翔に身体ごと壁に押さえつけられているからだ。 少しでも心翔が動けば心翔の太ももに当たっている僕自身が完全に勃ち上がりそうなくらい密着している。 そんな状態ではうかつに僕は動けないでいると完全にエレベーターの扉は開いてしまった。 どうか誰も居ませんようにと願うしかなかったが僕の願いも虚しく人がエレベーターに入って来る。 心翔も気付いているはずなのに離れようとしてくれない。 「はぁ〜。お前らいい加減にしろここは病院だぞ。家でやれ家で久遠と八坂」 心翔はエレベーターに入ってきた穂波先生に襟首を掴まれて引っ張られて後ろに倒れそうになった。 僕は慌てて心翔の腕を掴むと後ろに倒れないように腕を引いた。 「先生、危ないだろ?」 「うるさい。久遠。お前ら早く帰って勉強でもしてろ。聖に言うぞ」 「分かりました。大人しく家で続きします」 心翔はニヤリッと笑うと僕の腕を引いてエレベーターから降りた。 「あまり無茶するなよ。八坂も抵抗しろ」 「なっ」 先生なのに、なんて注意の仕方なんだよ。 けれど僕達の理解者である先生は本当に強い味方の1人なんだよね。 感謝してます。 けれど僕らの前と他の生徒の前では言葉遣いも態度も全く違う詐欺だ。 「じゃあな、気をつけて帰れよ」 「さよなら、穂波先生」 僕は先生に手を振ると心翔に腕を引っ張られながら歩いた。 「ごめん。止まんなかった」 「うん」 僕は心翔に腕を掴まれたまま離してともお願いしなかった。 何故か今はこうして歩かないと駄目な気がしたからだ。

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