405 / 903

第3話 それぞれ side心翔

待合室の長椅子で心輝が下を向いて祈っている様な形で座っていた。 「心輝」 名前を呼ぶだけでそれ以上言葉をかけれなかった。 優ちゃんも同じ様で『直は?』と聞きたいだろうが手術中の表示を見れば分かるまだ中にいるんだと言うことが・・・。 俺は心輝の隣に優ちゃんを下ろすと頭を撫でた。 「ゆづ君は大丈夫か?」 「うん。心輝は大丈夫?」 「良かった。俺は大丈夫だ」 心輝が頭を上げて優ちゃんを見たけどやっぱりすぐに下を向いてしまう。 きっと俺も優ちゃんが代わりに刺されたとかなら心輝と同じ様になると思う。 大切な人が身代わりとか胸が張り裂けてきっと俺は正気ではいれないかもしれない。 優ちゃんは手術中の表示を見つめて目に涙をためている。 抱きしめて慰めてやりたいが心輝を思うと躊躇ってしまう。 そんな時に看護師が1人中から出てきたがまだ手術中は点灯したままだ。 嫌な感じがする。 優ちゃんも落ち着かない様子で俺の手を探して見つけるとギュッと握り締めてきた。 俺は握られた手とは違う手で優ちゃんの頭を撫でる。 大丈夫だからとは声出さないが優ちゃんはギュッと握り締めていた手の力を緩めた。 竹田、お願いだからちゃんと元気になって戻って来い。 心輝も竹田が居ないと駄目だと思うから頑張れ。

ともだちにシェアしよう!