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第1話 好きな人

僕は藤咲正臣の部屋のソファに座って暖かい紅茶を淹れてもらっていた。 「外は寒かったですからね。よかったらどうぞ。それともシャワー浴びますか?」 「本当に僕が心翔の代わりに抱かれたらもう近づかないよな?」 「約束しましたからそれはお守りしますよ」 「分かった。シャワー貸してくれよ」 藤咲正臣は立ち上がると僕の腕を掴み立たせて歩き出した。 説明してくれたら自分で行くのに藤咲正臣に触られたら心翔の事を思いだしてムカついてくる。 「こちらです」 高級なホテルのようなバスルーム。 これって大理石とかいうやつなのかな? 「ふふっ・・・」 「何がおかしいのですか?」 「別に、貴方には関係ないですよ」 以外に冷静で嫌になるくらい笑えてくる。 心翔の代わりに抱かれに来た家の内装に驚いたりとか僕はやっぱりどこか壊れてるんだ。 あの時、親父に殺されていたら心翔は幸せに過ごせていたはずだ。 俺なんて居なくなれば良かったんだよな親父。 「ごゆっくりどうぞ。それと僕の下の名前で呼んで貰いたいのですが?」 「はいはい。正臣君がいい?正臣がいい?それとも違う呼び方?」 「正臣とダメですか?」 「正臣。また後でな」 「優月君。少し雰囲気が昨日と違う気がするんですが何かありましたか?」 なんだ? 何かありましたか? あったからここに居るんだろう。 「そうだな。俺は好きな人にサヨナラしてきた事くらいかもな」 そう言うと正臣の顔が曇った。 どうして正臣が泣きそうな顔してんだよ。 泣きたいのは俺なんだ。 バスルームのドアを閉めて床に座り込んだ。 泣かないって決めたのに・・・・・・。

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