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第11話 好きな人

2人で店内に入り禁煙席に案内してもらう。 正臣はメニューを見て『凄い』とか『これは何かな?』とか1人でブツブツと言っている。 「正臣は決まった?俺はチーズハンバーグのセットにするけど正臣は?」 「なんだか迷います」 「食べたいの選べば?また2人で来ればいいんじゃない?」 「また僕と来てくれるんですか?」 「正臣が嫌じゃなかったらな」 「じゃあ、僕も優月と同じのにします」 小さい子と来てるみたいで笑えてくる。 俺が笑ってると正臣は不思議そうな顔をしてみてきた。 「ごめん。なんか小さい子と来てるみたいな感覚で少しだけ笑えたんだ」 「そうかもしれません。家と学校の往復で両親とも外食はおろか顔をあわせる事も殆どありません。こうして外食するのは小さいとき以来です」 なんだか寂しい感じがする。 親に殺されかけた俺が言うのも変かもしれないけど放置されるのもどうなんだろう? 運ばれてきた料理を2人で会話もなく食べていた。 「正臣、美味しいのか?」 「不味くはないです。けど誰かと一緒に食事をすると美味しく思えます」 「そっか、良かった」 確かに1人の食事は美味しくない。 ずっとこの先も正臣は1人で食事をするのだろうか? 正臣もいつになるか分からないが自分の家族を持てば変わるのだろうか? 冷たい表情や声がいつか誰かに変えられるんだろうか? 早く正臣がそうなるといいよな。 食べ終わると2人で正臣の家に向かった。

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