502 / 903

第14話 好きな人

正臣の部屋に入るとソファに座った。 以前なら当たり前のように心翔の隣に座るけど俺は正臣の隣に座った。 それを見て心翔は下唇を噛み締めている。 苦しそうな顔をする心翔を見るのは辛くて泣きたくなる。 別れを告げられた日は、顔を見せてくれなかったから平気だったし学校でも心翔の顔を見ないようにしていた。 「遠回しには言いません。まず優月は心翔君の代わりに僕に抱かれています。条件は心翔君に関わらない事」 心翔は真っ直ぐに俺を見てくる。 何か言いたそうだけど俺を見たまま正臣の話を聞いている。 「謝らないといけないと思っていました。僕は嫉妬から好きでもない心翔君を抱いたのです。それを知っても優月君は僕に抱かれています。お二人が別れたのは僕の身勝手な行動からです。申し訳ない。謝っても許される事ではありません」 「ふ・・・ざけ・・・んな」 心翔は正臣を殴りそうな勢いで胸ぐらを掴んでいた。 人に触れる事も触られるのもダメだった心翔が正臣を殴ろうとしている。 「久遠君、正臣を殴っても気持ちは晴れないよ」 俺が言った事に殴ろうとしていた心翔の手の動きが止まった。 「なんだよそれ」 「正臣にも言ったんだ。何があっても別れない人達はいる。けど別れを決めたのは久遠君と俺だよ。確かに正臣の身勝手な行動は許せない。でも久遠君は心輝を許してるよね。状況は違うけど俺は心輝を許せた」 心輝も嫉妬から俺を西山冬樹の元に行かせたんだ。 結局は心輝も辛い思いをしていた。 正臣も自分の過ちを後悔しているのが解る。 「確かに心輝を許した。あれは心輝も酷い目にあってただろ?」 「そうだね。でも正臣も後悔している」 「許せるわけないだろ・・・あんな事され・・・ごめん」 心翔は俺を見て言いかけて止めた。 あんな事されては許せないよね。 「久遠君は何しに来たの?許せない相手に会いに来る必要ないだろ?」 「それは・・・・・・」 「優月の事が心配ですか?」 俺の事が心配で来たの? 心翔は俺を拒んだよ。 でももう前みたいには戻れないよ。 正臣に抱かれた俺なんて触りたくないだろう心翔。

ともだちにシェアしよう!