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第3話 好きな人 Side正臣
優月を手放さないとと少しだけ寂しさを感じていると思いもよらない相手が僕の家に来たのだ。
僕は心翔君に合わせたく無かったから違う部屋に案内をした。
「鈴木君。こんな時間にどうしたんですか?」
ソファに座ったまま下を向いて何か思いつめている様子だ。
好きな相手が辛い思いをするという事はこんなにも胸が苦しくなるものなのかとやっと理解できた。
久登はいつも笑っていてたまに怒りという感情を表に出すが弱った姿は見た事が無かった。
優月や心翔君にもこんなに苦しい思いをさせてしまっていたのかと思うと自分がどれ程愚か者が分かる。
「あの・・・。さっきファミレスに居ましたか?」
顔を上げて思いつめたように久登が僕に聞いてくる。
確かに優月と居たがもしかして久登はさっき居たのか?
「そうだな。さっき晩御飯を食べに行っていた」
久登は目を見開き驚いた顔をしたかと思うと目に涙を溜めてそれが止まれなくなりポロポロと零れ落ちてきた。
「鈴木君、大丈夫か?何があったんだ?」
僕は冷静を装っていたが目の前で好きな人が泣いていると思うと胸がチクチクと痛んだ。
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