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第6話 好きな人 Side正臣
僕は久登を求めてしまう。
このままでは歯止めが利かなくなりそうだ。
「久登、僕の部屋に客人を待たせているんだ。今から話す事で僕を嫌いになるかもしれない。それでも僕を選んでくれるならその客人に会ってはもらえないか?」
「僕が藤咲会長を嫌いになる?」
「幻滅されるに違い無いが僕はその過ちを隠したままには出来ない」
「僕はどんな話を聞いても藤咲会長を好きでいます。幻滅とかしません」
僕はソファに座りなおして話し始めると久登は黙って僕の話を聞いていてくれた。
話し終わると久登は目に涙をためて僕の胸に顔を埋めた。
「久登。こんな僕に触れてくれるのか?」
「藤咲会長は、僕が久遠心翔君を好きだと思ったからですよね?そう思わせた僕にも責任があります。僕は藤咲会長に嫉妬して欲しくて久遠君をカッコイイと言いました。だから・・・・・・僕の過ちでもあります」
「久登、すまない。僕は本当に愚かだった」
僕が久登をきつく抱きしめると久登も背中に腕を回して応えてくれるかのように抱きついてくれた。
僕は久登に嫌われる覚悟はしていたがこんな僕でも良いと触れてくれる久登を愛おしく思える。
優月にも心翔君にも本当にすまない事をしてしまった。
彼らもまた以前のように付き合ってくれればと思う。
「久登、僕の部屋に来てくれないか?」
「さっき言っていた会わせたい人ですか?」
「そうだ」
「分かりました」
ゆっくりと腕の力を緩めて久登の唇に触れるだけのキスをした。
久登は少し照れた笑顔を見せてくれる。
こんなに人を好きになれるものだろうかと思うくらい僕は久登の事が好きみたいだ。
久登が僕から離れてしまうとか考えられないでいる。
「藤咲会長?」
「すまない。それと正臣と呼ぶように久登」
「あっ・・・ま・・・・正臣」
僕は久登の手を握るとソファから立ち僕の部屋へと向かった。
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