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第5話 忘れてた誕生日 Side冬空

別荘に行く前日に必要な物を買いに行こうと龍をメールで誘ってみたけど返事はなくて仕方無しに俺だけ買い物に出掛けた。 食料は明日買うとして他に何かあったかな? 俺、靴下買おうと思ってたの忘れてたし携帯用の歯ブラシもいるよな? 旅行なんて、あまりしないから何が必要か分かんない。 前回は龍と買い物来て任せたから俺はただお金払っただけなんだ。 龍と一緒に来ていたら聞けたのに・・・・・・・。 携帯をポケットから出してメールをチェックするが受信は何もされていなかった。 雑貨店の前を通りかかると店先に見覚えのある2人が並んで何かを見ていた。 なんだよそれ・・・・・・。 「これ可愛いね」 「そうだな可愛いな」 2人が寄り添って楽しそうに笑っている。 なんか、傷つくとかムカつくとか全てをすっ飛ばして何も感じなくなっていた。 「あれ?龍君の幼馴染の子よね」 「えっ?」 俺に気付いたのは龍の隣にいる女の子でゆっくりと俺の方を見て龍は固まっていた。 龍の隣に居る女の子は確か龍のクラスメートだったかな? 「2人で買い物ですか?」 思わず話しかけてしまった。 「あっ、うん。龍君の幼馴染の塚元君よね」 「嬉しいな、俺の名前を知ってるんですか?」 「うん。3年の間でもカッコイイって有名なんだよ」 「俺なんて龍に比べたらダメですよ。2人の邪魔したら悪いんで帰ります」 龍は俺から目を逸らしたままで帰ろうとしても何も言わなかった。 何か言われても今の俺にはどうでも良かった。 龍の隣に居る女の子が何か言ってきたけど俺はそれに答えずに早あるでその場から立ち去った。 ジワジワと胸が苦しくなってくる。 泣きたいのに涙なんて出なかった。 ただこの場所から遠くに行きたくてひたすら前を向いて歩いた。

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