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第6話 忘れてた誕生日 Side冬空

辺りが暗くなる頃に家の前に着いた。 俺はどうやって帰ってきたんだろうと思う位に記憶が曖昧だった。 ふと、龍の部屋を見上げてみる。 まだ帰っていないのか部屋に明かりは無くて俺の携帯画面を見てみるが何も表示はされいない。 「冬空か?」 不意に後ろから名前を呼ばれるがこれは龍の声じゃ無い。 「帝(みかど)さん」 「どうしたんだ家の前でまた龍とでも喧嘩したか?」 帝さんは龍の2つ上のお兄さんで俺とも小さい時はよく遊んでくれていた。 「喧嘩してないですよ。帝さん、久しぶりですね」 「俺がバイトとかしてるからな」 「今日はバイト休みですか?」 「休み、久しぶりに俺の部屋くるか?」 帝さんは龍との事もさっきの出来事も知らない。 ただ近所の弟みたいな存在と久しぶりに会ったから話したいだけなんだ。 でも帝さんの部屋に行くというのは龍にも会うかもしれない。 「なんか用事があるなら無理にとは言わないけど冬空」 帝さんは優しい。 いつも俺の気持ちを1番に優先してくれる。 まだ夜の7時前だから少しくらい話しても大丈夫だよな? 龍だってもしかしたら晩御飯をさっきの女の子と食べてくるかもしれないだろ? それに今1人になったら俺は・・・・・・・・。 「そんなに遅くならないんだったら平気です」 「なら、入れよ」 「はい」 「冬空、他人行儀みたいだから昔みたいにタメ口で話せよ」 「あっ、はい。帝さん」 帝さんは俺の頬を指で摘むと悪戯っぽい笑顔を見せた。 昔と変わらない帝さん。 俺が小さい時によく頬を摘んでたよな? どうしてかと聞いたら柔らかくてプニプニして気持ちが良いと言ったのを覚えている。 けど今はそれほど柔らかく無いんだけどな?

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