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第11話 忘れてた誕生日 Side冬空
帝さんの部屋を出て龍の部屋の前を過ぎようとした時に後ろから腕を掴まれた。
「冬空、待てよ」
その声は龍のものだと分かったが俺は手を振り払い逃げる様に走り出そうとしたが今度は後ろから抱き締められた。
「頼むから・・・冬空」
龍の声は弱々しくて今にも泣きそうな感じがした。
「分かったから・・・離せよ龍」
「離さない」
「逃げないから・・・・・龍」
「分かった。俺の部屋で話そう冬空」
龍は俺から離れると部屋へ入って行った。
俺も龍の後について部屋に入るといつも座る決まった場所に腰を降ろした。
俺が龍の部屋に来なくなってどの位になるんだろうか?
俺以外の誰かをこの部屋に入れたんだろうか?
頭に浮かぶのは今日ショッピングモールで会った龍の隣にいた女の子だった。
「今日、一緒にいた奴とは何も無いからな冬空」
何もなくてあんな寄り添って歩いたりしてたのかよ。
そう言いたかったがさっき帝さんにされていた事を考えたら寄り添って歩くなんて可愛いもんだよな。
俺は返事をせずにただ龍が話している事を上の空で聞いていた。
ダンッ!
後頭部から背中にかけて痛みが走る。
「つっ・・・・・」
良く見ると龍の顔が俺の前にあり背景は壁ではなくて天井だった。
「話し聞いてるのかよ!」
「ごめん・・・・・・」
俺は龍から顔を逸らして横を向いた。
龍の顔が直視できなかった。
龍とも話をしたかったがさっき帝さんにされた事が頭から離れずにいて身体が少し強張っているのが分かった。
龍に乱暴に押し倒されようが恐怖は感じないが帝さんにされた時は恐怖を感じていたのだ。
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