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第9話 お屋敷
「取り乱してすまなかった。俺も同じ様な事をしておいて自分勝手だった。すまない」
「藤咲君、顔を洗ってきたら?僕が案内するよ。部屋の作りは似てるからあそこだよね。優月くん」
直が指をさしたのはバスルーム。
バスルームと洗面台とトイレは同じ場所にある。
「うん。そうだよ直」
僕がそう言うとニッコリ笑って立ち上がり正臣の腕を引っ張った。
「大丈夫だ。自分で立てる。気を使わせてすまない」
「謝らないでよ。こういう時はね。ありがとうでいいんだよ」
「そうなのか?ありがとう」
あの正臣が直の前では素直な普通の男子高校生にしか見えない。
直って凄いよ。
こんな可愛らしい直を日野達はあんな事やこんな事がよくできたもんだ。
思い出したら殴りたくなってきちゃった。
「藤咲、携帯を借りる。心輝と2人で伯父さんに話をしてくる。優ちゃんと竹田とで大人しく待ってろよ」
「すまない」
「藤咲君、違うよ。これもありがとうで良いんだよ。ねっ、久遠君」
直が微笑んで心翔に言った。
心翔も険しい表情をしていたが直につられて笑っている。
直、ありがとう。
僕だけだったらきっとこんなにも和やかな空気に出来なかった。
鈴木君がどうなったのかは動画からは分からない。
殴られたりの暴行を数分受けた後、薬みたいなのを飲まされてすぐに身体が痙攣を起こして意識を失った所までの動画。
お願いだから無事でいて鈴木君。
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