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第10話 バレンタイン

「お待たせいたしました」 店員さんが僕の前にフルーツがたくさん乗ったパンケーキを置いた。 イチゴ、バナナ、ブルーベリー、リンゴ、オレンジ。 フルーツの上には生クリームが乗っていてメープルシロップがかけられていた。 そして心翔の前に置かれたパンケーキを見て言葉が出なかった。 生クリームにバナナとチョコレートソース。 生クリームはチョコレート色をしていた。 「バレンタインだからかな?」 心翔はそう言って笑ったけどチョコレートを食べるのは今日は僕からだけにして欲しかった。 「どうしたの?優ちゃん」 「あっ・・・うん。バレンタインだからだよ多分」 「変えようか?」 「えっ?」 「俺、優ちゃんのパンケーキのが良かったかもしれないから交換してくれないか?」 心翔は僕の表情から何か読み取ったのかパンケーキを交換したいと言い出した。 「いいよ」 「うん。ありがとう優ちゃん」 心翔は僕のパンケーキを取ると心翔のパンケーキを僕の目の前に置いて優しく微笑んでくれた。 やっぱり、心翔は気付いたのかもしれない。

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