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第8話 バレンタイン Side直

ガタンッ! 「何してんだ?」 頭上から音と声が聞こえて来る。 この声は・・・・・・。 怖くて目を瞑っていたけど声を聞いて恐る恐る開けて上を見てみると隣の個室から心輝が覗き込んでいた。 山田さんも上を向いて固まっている。 「ドアを開けて出て来いよ。出て来ないなら上から行こうか?おっさん」 「誰だ?」 「はぁ?お前こそ誰だよ。早く出て来い!」 山田さんよりも冷めた目をしている。 こんな心輝を見たのはいつ? ここまで冷たい感じの目をしたことが無いかもしれない。 山田さんがなかなかドアを開けようとしないから心輝は上から降りてこようとしていた。 登る最中に山田さんはドアを開けて走って逃げ出した。 「あっ、逃げやがった。なんだあのおっさん」 僕は心輝が逃げていく山田さんを見て呆れた顔をしているのを下から見上げていたが急に視界から消えたと思ったら今度はドアを開けて入って来た。 恐怖から解放された僕は足の力が抜けて足から崩れ落ちるように床に座りかけたが心輝が僕の腕を引っ張り暖かな腕の中にスッポリと収めてくれて強く抱きしめてくれた。 「ごめんな直。本当にごめん」 泣きそうな声で僕の肩に額を付けて謝る心輝はさっきと別人でいつもの僕が知っている心輝だった。 僕も心輝の背中に腕を回して力を入れようとしたけどさっきの恐怖からか手が震えていて上手く力が入らなかったけど今出せる力で心輝にしがみついた。

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