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第6話 卒業

「あの〜。早く旅行の事を決めないと・・・」 直が恐る恐る言った。 僕が意地を張らなかったら今頃は旅行の話が半分くらい終わっていたと思う。 「ごめんね。僕がムキになったから・・・」 「優月君、気にしないでよ」 直がニッコリと笑うとやっぱり和むんだ。 いつもありがとう。 心輝と天使ちゃんも言い合いしてたけれど直の笑顔を見たら急に大人しくなった。 それから旅行の計画の話が始まった。 「ウサちゃんと冬空君は僕達に任せるって言ってたから今日は呼ばなかったよ」 「2人っきりで過ごさせてやりたい。卒業したらなかなか会えないだろうと思うんだ」 心翔の言う通りかもしれない。 ウサちゃんは調理の専門学校に行く事が決まりそれと卒業旅行が終わったら厨房でのアルバイトが決まっている。 きっと前より会う時間がなくなるんだ。 2人が決めた事でそれは将来を考えた選択だから寂しくはないと言っている。 「俺と直は将来もう決まってるんだ」 「えっ?」 直が聞いてないとか言う感じで心輝の顔を見ている。 「両親の許可は取ったし直の兄さんにも話はつけた。俺の両親のホテルで働く事を決めた」 「ちょっと待って、いつ決めたの?」 「直が怪我して入院した時に俺の気持ちは伝えた。大学出てからだけどホテルで働く話は直しだい。俺はホテルで働く事が条件で直と一緒に居る。だけど直は好きな道を進めばいいよ」 「心輝、ありがとう」 皆んな将来を考えてるんだ。 僕は何も考えていない。 具体的に何がしたいとか考えた事がなくて本当に毎日が過ぎればそれでよかったし希望とか未来とか何年も無縁で生きてきたんだ。 僕の未来は消えてなくなる事しか考えてなかった。 今は・・・ずっと心翔と居たい。

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