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第11話
※三条優紀視点
部屋に入り、リビングに向かう。
電気が付いてなくててっきり誰もいないのかと思い電気を付ける。
するとソファにはみ出した足が見えた。
なんだ、寝てるのか。
昔は全寮制だったらしく、個室が2つあり一つは俺が使いもう一つは物置にしていた。
同室者が来るなら片しとかないとなととりあえず自室に入り着替える事にした。
あ、同室者の寝顔くらい見とけば良かった…まぁいいか。
Tシャツにズボンというラフな格好をして物置部屋に入る。
……なんかいろいろとごちゃごちゃしてるなー…全部実家から送られてくる謎の物ばかりだ。
このやたら部屋を圧迫する健康器具とか絶対いらない…母さん、最近太ったって騒いでるんだから自分で使えばいいのに…
とはいえせっかく送られたものを捨てるのも悪いから置いていたんだよな。
誰か欲しいやつにあげるかな。
しかし、今日一日でどうにかなる量ではなくて最悪俺のせいだし俺の部屋のベッドを同室者に使わせて俺はソファで寝るかな。
バイト入れすぎて忙しかった時自室に帰るのも面倒でソファで寝たら翌日変な体制で寝たから寝違えたんだよな。
……仕方ないか。
リビングに戻り同室者を起こそうとソファに近付く。
もうすぐ夕飯の時間だし、食いっぱぐれるぞ?
同室者を覗き込むと驚いた。
「河原?」
「…ん、んー…」
俺の声に反応したのか河原は唸っているが起きる気配がない。
なんで河原がここに?もしかして河原は俺の同室者?
とりあえず起こそうと肩を揺する。
起きる気配がなく、どうしようと考えていたらグイッと肩を掴んでいた手を引っ張られてバランスを崩し河原に覆い被さる体制になった。
起き上がろうとしたら後頭部を掴まれそのままキスをされた。
口の中が甘い味で広がる。
コロッとなにかが舌に触れる。
これは飴か?
お互いの舌で飴を転がし合い甘い飴を分ける。
なんだこれ、腰が痺れてゾクゾクする。
飴が小さくなり、消えたら唇がようやく解放してくれた。
息を荒げる俺に河原はニヤッと笑う。
「何だよ、また抜いてほしいのか?」
「ちげーよ!お前こそ誰でもこんな事すんのかよ!」
「………はぁ?」
楽しそうだった河原は一気に不機嫌な顔になった。
…なんだ?俺、なんか変な事言ったか?
だって河原は目を閉じて寝てたし、同室者が俺だって知ってたのか?
管理人に聞けば一発だけど、俺も今さっき聞かされたし引っ越しで慌ただしくて聞いてないと思ったんだけど…
河原は制服のままで寝ていたから皺になってしまった黒いブレザーを脱ぎネクタイを緩める。
テーブルに置いていた可愛い赤と白の水玉模様の飴の包み紙を掴む。
「わざわざ俺がお前と同じ部屋にしてくれって管理人に頼んだ意味ねぇだろ」
「……なんだ?聞こえない」
「聞かなくていい、ほらこれ」
河原になにかを投げられキャッチする。
それはテーブルに置いてあった飴だ。
さっき河原が食べていたものと同じなのだろう。
河原は「よろしくな」と言った。
結局誰でもキスする奴なのかなんなのか分からないが、とりあえず今日から河原と過ごす事になった。
リビングには段ボールが置かれてた。
2つしかない段ボールに私物が少ないのか?と思う。
河原はその一つの段ボールを開けて服を取り出し着替える。
そうだ、部屋…物置だった…早く片付けないとな。
「河原、自室はもうちょっと待ってくれ…すぐに片付けるから」
「必要ねぇ、お前の部屋で寝るから」
まぁ俺が悪いし、ベッドは譲るか。
俺はずっとソファは嫌だから早く片付けてしまおう。
俺が頷くと河原は笑った。
素顔を知ってしまったからか、根暗姿でもカッコいいと思ってしまう。
「このかつら蒸れるんだよなぁ…」と愚痴を溢しながら着替えの時外していたかつらを付ける。
するとスマホが震えて始からSNSが届いた。
……あ、そうだ断りのメール送るの忘れてた。
すぐに返信する。
これでよし、さぁこれで思いっきりいちゃついてくれ!
「あ、そうだ…河原…SNSやってるか?」
「………公式の以外ならないな」
「公式?…やってないの?」
「お前がやってって可愛くおねだりしたらアカウント作ってやるよ」
何処までも俺様だな、コイツは…
可愛くって、俺が?そんなキモい事出来るかよ。
でも連絡先を知っといた方がなにかあった時便利なんだよな。
電話よりSNSの方が手軽で簡単だからな。
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