【あらすじ】 俺、三条優紀は一年前彼女にフラれ…初カノだったダメージも多く、具合悪くて公衆トイレで吐いた。 その時、たまたまトイレにやってきた河原飛鳥に介抱してもらい、濃厚なディープキスという名の口移しで水を飲ませてもらった。 すっかりその事を忘れていた俺は半年後、彼女を忘れるために始めた短期バイトに嵌まり金を貯める楽しみを知っていて第二の人生を満喫していた。 その金はだいたい生活費や妹の萌のプレゼントで消えていくが、必要なものだと自分で思っているから何とも思わない。 そんな俺の前に根暗そうな男が転校してきた。 態度悪いし口悪くて最初は気に入らなかったが根暗の正体を偶然知り秘密を共有する仲になった。 芸能人だと言うが、未だに正体は分からない……どっかで見た気がするが芸能人とか全く興味ないからな。 そんな根暗と同室者になり、なりゆきでヤられ…彼があの時助けてくれた河原飛鳥だと知る。 そして飛鳥の今カノとかまだ未解決でモヤモヤするが飛鳥にはちゃんと彼女と別れてから付き合おうと思う。 飛鳥にその事を伝える前に、また問題が発生したけどな。 ーーー 鳥の囀ずる声を聞き重たい目蓋をゆっくりと開ける。 目の前には昨日食べた夜食の空の容器がテーブルに乗っていた。 水で流して捨てなきゃな…昨日疲れてそのままソファに寝たんだっけ。 背伸びするとポキポキ音がする、ヤベッ疲れ取れない。 チカチカと床に置かれたスマホが光るから手に取ると誰かがSNSを送信していた。 一つは飛鳥からで俺が家に向かってる途中の時刻だろう「早く帰ってこい」とそれだけ書かれていた。 このメッセージを見てたら不安にならなかったのかもな。 …まぁそれがなかったら自分の気持ちに気付かなかったわけだし、良かったのかもしれない。 もう一つは妹の萌からだった、萌のメッセージはスタンプだらけで正直読みにくい。 そこで大事な事を思い出し顔を青ざめスマホを落とした。 萌からのメッセージには「チケット取れた？」という内容だった。 そういえばそんな事を言われていたが飛鳥で頭がいっぱいだったし昨日ゴタゴタしてて忘れてた！！ 急いでサイトを見るが、目に入ったのは「チケット完売いたしました」という文字だった。 …萌になんて言おう、ぐーすか寝てたとか馬鹿正直に言えない…妹に嫌われたくない。 お詫びとして「ま、マカロン」と萌に送ると怒りマークのスタンプが送られてきた、本当にごめん！ 今度の休みの日久々に会わなきゃな、許してくれそうにないけど… 今日は学校が休みだが、早急に解決しなきゃいけない問題があるから会えないけど予定が空いたら会おうと萌に謝りのメッセージを送っているとドアが開く音がした。 飛鳥が起きたのか夜食のゴミを片付けているとリビングにやってきた。 かつらについた寝癖がなんか面白くて笑うと飛鳥は不機嫌な顔をしていた。 「…何だよ」 「いや、跳ねてるぞ」 「仕方ねぇだろ、イビキがうるさかったんだから」 飛鳥は台所で容器を洗い流す俺の手を取り壁に押し付けた。 女の子なら喜びそうなシチュエーションだな、俺は不良に絡まれてるシチュエーションだとしか思えない。 飛鳥はキスをしてきた、普通にそれを受け入れる。 口を開けると舌が入り、だんだん深く深くキスをする。 鼻から息が漏れる、朝勃ちを撫でられピクッと反応した。 耳元で飛鳥がイライラしたような声で話しかけてきた。 「俺はお前以外と寝たくねぇんだよ、意味ねぇだろ…お前がいない部屋なんて」 「今日だけだからさ…」 ガチャともう一度自室が開く音がして飛鳥に「ほら、トラウマ再来するから退け」と言うと舌打ちしつつ退いてくれた。 リビングに入るなり「優紀ー、朝飯は？」と聞いてくるから飛鳥はぶん殴りに行こうとするから阻止する。 メガネの顔は中の上くらいの友人、久我始は大きな欠伸をしながらリビングのソファに座る。 昨日始は恋人の上条紫乃といい雰囲気になったという。 紫乃を押し倒し、童貞卒業するつもりだった。 しかし逆に紫乃に押し倒され流されるまま指を尻の穴に一本入れられビビり紫乃の部屋から飛び出し俺達の部屋にやってきて助けを求めてきた。 俺達以外寮は個室なんだから自分の部屋に帰れと言ったが紫乃が合鍵を持ってるらしく部屋には怖くて戻れないと１日だけ俺達の部屋に泊めた。 いきなり転がり込んで来たが傷付いた始にソファで寝ろと言うのは可哀想だから自分はソファで寝て最後まで反対していた飛鳥に終わったらなんでもするからと言い渋々頷かせた。 始はソファに座りテレビのニュースを見ながら「床で寝たから背中いてぇ…」と言っていた。 「飛鳥、始にベッド譲らなかったのか？」 「当たり前だろ、俺達がするベッドに他人のにおいとかキモい」 嫌そうな顔の飛鳥に無理言ったしなと何も言えず俺は苦笑いした。 食堂に行って朝飯食べようと始を誘うと「紫乃がいるかもしれないから」と拒否した。 じゃあ仕方ない、寮内にあるコンビニで適当に買ってくるか。 昨日は何とか大丈夫だったが、飛鳥と始を二人きりにすると危なそうだから飛鳥を連れてコンビニに出かけた。 だいたいの生徒は食堂に行くが、部屋で静かに食べたい生徒も居てコンビニにはちらほらと生徒がいた。 蕎麦か、うまそうだな…もうそろそろ暑くなってくるし… 「飛鳥は何にする？」 「…なぁ優紀、あんなもんなのか？」 飛鳥はサラダの袋を見つめながらそんな事を言ってくる。