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第42話

可笑しいな、飛鳥に触られた時はあんなに気持ち良かったのに自分じゃそんなに気持ちよくない。 飛鳥の真似をして亀頭を擦ったら強すぎて痛くてちょっと泣いた。 ふと目の前に飛鳥のカメラがあった。 昨日撮ってそのままベッドの横に置きっぱなしにしていたのか。 手に取り、ちょっと操作する。 50万だから自然と手が震える。 『あっ!!ああぁぁっっ!!!!』 いきなり喘ぎ声が聞こえて驚いてベッドの上に落とす。 慌てて拾い上げて壊れてないか確認しているとビデオの再生画面が見えた。 これはまさに昨日撮影したアレだ。 自分では気付かなかった、飛鳥からこんな風に見えていたのかと顔を赤くして目を逸らせず見た。 顔を赤らめて誘うように目を潤ませて俺は飛鳥を見ていた。 飛鳥もそれに応えるように腰を打ち付けて口付けをする。 カメラに撮られてる事も忘れて理性もなく飛鳥の与える快楽だけでイっていた。 変だな、AVと違って当事者だし…自分の喘ぎとか気持ち悪いって思っている筈なのにさっきよりも興奮している。 しかも腹の奥が疼いている。 ……無意識に身体は飛鳥を求めているのか? ビデオを俺が見えるように枕元に置いた。 ズボンの中に手を入れて今度はひくついている場所に触れた。 飛鳥の服は握りすぎてシワになっていた。 …悪い飛鳥、後で洗って返すから…今はお前が傍にいるって思わせてくれ。 指を突き入れるとビクッと身体が喜んだ。 …でもやっぱり飛鳥が与える快楽には劣ってしまう。 興奮はしているのに物足りない。 快楽が身体の中で行き場をなくしてぐるぐる回っている。 ……何だか虚しくなった。 一人で何やってんだよ、俺… 「飛鳥…」と呟き瞳を閉じた。 ビデオに撮影された俺は嬉しそうで、嫉妬した。 なんで、今俺の傍に飛鳥はいないのだろうか。 目元が熱くなる、寂しくて泣くとか本当に女々しい… そう思っているのに涙は止まらなかった。 ーーー 何だかすっきりしない朝を迎えた。 処理しないで寝たからか下半身が痛い。 朝風呂場で無心になって処理した。 昨日みたいに出なかったらどうしようか悩んでいたのが馬鹿馬鹿しいほど呆気なく出た。 気持ちよくなりたいって考えなきゃ生理的に出るもんだな、と妙に感心した。 朝は食欲がなくて、台所でインスタントコーヒーを淹れる。 台所には昨日飲んだコーヒーカップが……… 「…あ、あれ?」 シンクの中を覗く。 昨日コーヒーカップ洗ったっけ? あの時ボーッとしてたから記憶が曖昧だ。 でも洗ってあるし、多分無意識に俺が洗ったんだなと納得してコーヒーをコーヒーカップに淹れる。 今日も外は雨が降っていた。 スマホを見ると着信が数件あったが妹と紫乃だった。 飛鳥は、ない。 自分から電話してみようかと手を出すが、寸前で止めた。 飛鳥に電話するのは盗撮犯を捕まえてからにしよう。 じゃないと、またギスギスしてしまうかもしれない。 スマホを掴みカバンに放り込み部屋を出た。 廊下を歩くと靴音が響く。 それだけだったら良かったんだけど、二つの靴音が響いている。 後ろを振り返ってみても誰もいない。 ……これ、間違いなくつけられているな。 盗撮犯だろうか、とりあえず人気のないところに誘き寄せて…それで… 違うなら違うでいいが、人気がないあの廊下を歩いていて後ろから着いてくる。 いったい誰だよ、こんな事するのは… 空き教室は飛鳥がいないと鍵が閉まってるから廊下の奥の階段付近まで走る。 そして待ち伏せする。 後ろから着いてきた奴も俺がいきなり廊下の隅からいなくなり焦ったのか走る足音が響いた。 階段に現れたソイツを見て一発殴ってやろうかと目の前に現れた。 そして固まった。 カメラを持っていた、きっと俺が探していた男だろう。 でも俺の想像とは遥かに違った。 こそこそ盗撮するような男だし、内気で弱そうな奴だと思っていた。 でも、目の前の男は真逆だった。 俺より身長が高いアメフトでもやってんのかと思うほどにガタイがデカい男だった。 俺が殴ったところでひょろひょろパンチなんて効かない気がした。 「えっと…誰?」 「僕ぁ、君のぅ大ファンなんだぁ」 「…ど、どーも」 喋り方がねっとりしていて鳥肌がぞわぞわとする。 ただのファンなら、俺としてはかなり嫌だが…まぁ何もないなら気にしなきゃいいだけと思うだろう。 …しかしこの男は俺を尾行していて、カメラを持っている…嫌な予感しかしない。 カメラに目線が行くと突然男はカメラを持ちカシャと写真を撮った。 目を丸くして驚いている間抜けな写真を撮られて眉を寄せる。 なにがしたいんだよ、コイツ。

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