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第43話

「はぁはぁ、ねぇ…写真…撮らせてぇ…裸の写真でいいから」 コイツもかよ…男の写真のなにがいいんだよ。 飛鳥みたいな美形ならともかく俺みたいな奴を撮っても仕方ねぇだろ… いや、俺は飛鳥の裸が見たいわけでは…何度も見ててほどよい筋肉で美しい肉体美だとは思うけど……って、誰に言い訳してるんだよ。 俺の目の前のコイツは無駄だらけの筋肉だな、お世辞でも美しいとは言えない。 俺ははっきりきっぱり「断る」と言った。 それで諦めてくれるなら苦労はしないけど… コイツに襲われたらヤバいかもしれないなと思い、人気のないところは逆効果だった。 倒せると思ったんだ、まさか体育会系だとは思わなかった。 廊下側は男が塞いでいるから二階に行こうと階段を上ろうとしたら突然腕を掴まれて壁に激突した。 背中が痛くなり男を睨むと目が血走っているのが見えた。 ……コイツ、まさか… 「無理矢理ってぇ、なかなかエッチだよねぇ」 「ふざけんな!離せ!!」 もがいて抵抗するがびくともしない。 この筋肉ダルマがっ!! 飛鳥以外にされるとか想像しただけで顔を青ざめて嫌悪感を露にする。 そんな事されたら俺はもう二度と飛鳥に顔を見せられない。 俺の抵抗虚しくネクタイが外された。 必死に男を殴り付けるが男は痛くないのかニヤニヤしている。 「抵抗されると余計興奮するぅ、もっと可愛く殴ってよぉ」 「そんなに殴られたいならお望みを叶えてやるよっ!!」 男の顔面を回し蹴りで殴ると重そうだと感じた巨体はコロコロと転がっていく。 俺は呆然とそれを見ているだけだった。 コツコツと靴音を鳴らしながら男に近付くと図体はデカいのに小心者なのかビクッと震えていた。 男の首に下げていたカメラを奪う。 なにか言いたげな男だったが言えずもごもごと口を動かすだけだった。 カメラを操作して今まで撮ってた写真を見る。 「うわっ、着替えの時も盗撮してたのかよ」 「そ…それ…」 「ん?…あぁ、返すよ」 恐る恐る男が言いてっきり普通に返すのかと思っていた。 突然窓を開けて外にカメラを投げ捨てた。 カメラは校舎裏の芝生に落ちた。 雨が降り、カメラを濡らしていく。 あのカメラ安物っぽかったし…防水機能なさそうだ。 男は悲鳴を上げて今すぐ窓から飛び出してカメラを取ろうとしているところで男の頭を掴み低い声で言った。 「盗撮するだけのカメラなんていらねぇよな………二度と俺の優紀に近付くな」 手を離すと涙目になった男は雨に濡れる事なんてお構い無しに窓から飛び出してカメラに向かって走っていった。 それを無言で窓を閉めて鍵を掛ける。 俺はまだなんでここに飛鳥がいるのか分からなかった。 飛鳥を怒らせたのに助けてくれた… お礼言ってごめんなさいって言わなくては… そう思っていたら飛鳥はこちらを見て優しく微笑んでいた。 「…やっぱり俺は頼りになるだろ?」 「……………あぁ」 雨で薄暗くじめじめしていた空間は飛鳥の笑顔で照らされた気がした。 俺には眩しすぎた光だった。 手を差し伸ばされ、強く握り起こされた。 ネクタイを飛鳥に結んでもらい、なにかされたか聞かれたから首を横に振った。 何でもない顔をしてるが、謝らなくては… 飛鳥の横を歩き教室に向かう。 「悪かった、飛鳥は犯人探し協力しようとしてくれてたのに」 「別に怒ってねぇよ、あー…でも人気のないところに誘き寄せたのは怒ってるけど」 「…むぅ」 飛鳥に鼻を摘ままれた。 何も言えず無言でされるがままだった。 全部俺が悪いと反省していた。 助けに来てくれた時の飛鳥がなんか格好良かったなと思いながらもちょっと気まずくなり目を逸らす。 飛鳥はなんであんな人気がないところにいたんだろうか。 空き教室に用があってたまたま俺を見つけたって事なのか? 結果的に犯人をこらしめる事が出来て偶然が良かったなと思う。 「飛鳥、空き教室に用事があったんじゃないのか?いいのか?」 「…は?別にねぇけど」 「え?だって偶然空き教室に用があって俺達を見かけたんじゃ…」 「そんな偶然頼るわけねぇだろ?尾行してたんだよ、お前じゃなくあの盗撮犯を」 飛鳥から思ってもみなかった事を言われた。 まさか尾行してたなんて、しかもあの男を… という事は飛鳥はアイツが盗撮犯だって知ってたのか? いつから?どうやって?疑問が絶えなかったが飛鳥は話した。 昨日俺と別れた後に飛鳥は一人で犯人探しに向かったそうだ。 とはいえ俺と違い飛鳥は写真を見てないから手がかりはほとんどなかった。 唯一の手がかりである飛鳥も見ていた小太りの男だけだった。 そして飛鳥に睨まれた小太りの男はこそこそと何処かに向かうのが見えて後を追った。 そこは生物室でカーテンが閉めきられていて中が見えない状態だった。 しかしあの小太りの男はうっかり鍵を閉め忘れていて運が良いとこっそりとドアを開けて中を覗く。 そこにいたのはいかにもモテなさそうな非モテ野郎共の集会場だった。 そこでは写真を見せあいどれがいいかとか鼻息荒く話していた。 その中でも特に多かったのは俺の写真だったそうだ。 俺は自分の写真を売ってない、つまり全て隠し撮りだ。 その中でもリーダーの男が目に入った。 それがあの筋肉ダルマだ。 コイツが明日俺の写真を撮るから待っていろとメンバー達に高々に宣言して飛鳥は尾行する事にしたらしい。 「飛鳥、仕事行かなかったのか?」 「そんな事気にしてんのか?予定ずらせる仕事だからどうしても昨日じゃなきゃだめってわけじゃないんだから気にするな」 「………そうか、ありがとう」 俺は何もしてないようなものだよな、飛鳥に感謝しかない。 飛鳥の手を握り小さく呟いた。 するとグイッと腕を引かれた。 驚いて飛鳥を見るが前髪が邪魔して飛鳥がどんな顔をしているのか分からない。 廊下の曲がり角の教室から視界になる場所の壁に押さえつけられてキスをされた。 こんなところで…誰かに見られるかもしれない。 そう頭では思っているのに手は飛鳥の背中に回り夢中で舌を絡め合う。 呼吸が苦しくなるほど激しい口付けで飛鳥の足が俺の足の間に割り込む。 グリッと押されて顔を赤らめて震える。 さすがにここでするのはマズイよな。 飛鳥も同じ事を考えていたのか俺から離れる。 ボーッとしていたら突然飛鳥が制服の袖で頭を擦ってきた。 ボタンが当たってイテェ!と飛鳥の手を払う。 「何すんだよ!」 「エロい顔のまま教室に行くつもりか?また撮られても知らねぇぞ?」 「そんなのっ…!!」

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