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第45話

「飛鳥、いいじゃねぇか…協力してやろうよ」 「…煮たまごで買収されてんなよ」 だってここの煮たまご美味いけど高いからさ… 二人が飛鳥にすがっていたのは、まぁ勉強だ。 もうすぐ期末だし二人共部活や他の事で勉強してなくて余裕ないのだろう。 紫乃は部活ばかりで正直バカだから赤点の常習になっている。 始は文系でも勉強となると話は別だ、文系以外が破滅的だ。 紫乃ほどじゃないが赤点になった事がある。 去年までは暇な時俺が二人の勉強を見ていた。 そこそこ勉強は出来る方だし、家庭教師のバイトをした事があるから教え方が上手いと二人に絶賛されていた。 悪い気はしなかったが、ちょっと今年は二人の勉強を見るのは勘弁したい。 ……去年の悪夢をもう一度とかになったら口から血を吐くかもしれない。 飛鳥にやらせるのは気の毒だが、もしかしたら飛鳥なら案外上手く行くんじゃないかと考えていた。 口調は荒いがああ見えて面倒見良さそうだし、ダメならダメで他の手も考えとこう。 すっかり飛鳥が教える空気にしている二人を死んだ目をして見ている飛鳥を見つめる。 「お前ら、飛鳥の都合優先だからな」 「分かってるよ!」 「空いた日が決まったら教えてくれよ!」 期末の心配がなくなったのか二人は昼飯を食べ初めた。 そういえば飛鳥は誰かに勉強教えた事あるのだろうか。 勉強が出来ても教え方が下手な人がいるからな。 俺も出来るかぎりはサポートするけど飛鳥が心配になってきた。 コイツらを押し付けて悪いと罪悪感を抱きながら煮たまごを食べる。 ……上手い、じっくり煮込んで染み込んでるからってなんで煮たまご一つが五百円もするんだか… 「飛鳥、勉強教えた事あるのか?」 「…前の学校の時は芸能人だって隠してなかったから外面は気をつけてたから普通に分からないところを教えてた」 「へぇ、じゃあ安心だな」 「……お前は、期末大丈夫なのか?」 飛鳥は面倒そうな顔をしてても俺の心配までしてくれるなんて優しいんだな。 教えるなら一人増えても変わらないと思ってるだけだろうけどな。 俺は大丈夫だと伝えると飛鳥はあからさまにガッカリした顔をしていた。 え?そこまで?俺にそんなに教えたかったのか? 頼られたかった?…飛鳥って顔は可愛くないけど中身は結構可愛いよな。 飛鳥がそこまで教えたいなら分からないふりをしてもいいぞ? 「…はぁ、問題間違えるごとにお仕置きとか出来ねぇじゃねーか」 「……………俺の気持ちを返してくれ」 ちょっとでも飛鳥可愛いとか思って後悔した。 なんだその変なプレイは、ただのエロ飛鳥じゃねぇか! そんなどうでもいい会話が続き昼休みは過ぎていった。 飛鳥がスマホのカレンダーを眺めて一週間後の放課後、紫乃の部活終わりに始の部屋に集合という約束をした。 学校休みの時の方がいっぱい勉強出来るんじゃないか?と飛鳥に言うと「休みは俺と優紀の時間だから却下」と涼しげな顔で言われた。 ……変な事を想像してしまい顔を赤くして目を逸らした。 恥ずかしい奴だな、飛鳥は無意識で言ってんのか?いや…じゃないけど… 放課後になり、部活がある紫乃と始と別れた。 飛鳥は昨日仕事を延ばしてもらったから行かなきゃいけないと「一時間で戻るから先に部屋に入るなよ」と言われ出かけていった。 なんで入っちゃいけないのか分からないが、仕方なく学校に残る事にした。 雨が降ってるし、外に行く気分ではない…それにしては一時間でいったい何をしてくるんだ?さっぱり分からない。 求人雑誌を見ながら何処のバイトをしようか考えていた。 カシャッと小さな小さな機械音が聞こえた。 雨音がうるさくて聞き逃すほどの小さな音で、音がした廊下の方に目を向ける。 誰もいない……盗撮犯と会ったからか幻聴でも聞こえただけかなと思い再び求人雑誌を眺める。 グループで話している生徒が教室で何人か見かけた。 それが一人、また一人と帰っていくのを音で感じながら目線は雑誌から逸らさない。 もうすぐ夏が近付いてるな…そうなったら海の家でバイトもいいかもしれない。 去年は紫乃と始と遊びに行ったから今年は飛鳥もいる、きっと去年より楽しいんだろうな。 なんせ去年の夏祭りは紫乃と始が終始いちゃついていて後ろにいた俺はそれを眺めるという変なプレイさせられた気分だったからな。 飛鳥がいればあの寂しさを味わわなくて済みそうだ。 飛鳥の実家ってどの辺なんだろうか、うーん…家族の話とかした事ないからな。 ガラッと音を立てて教室のドアが開かれた。 横目で見るとそこには今まさに考えていた飛鳥がいた。 「お待たせ、帰るか」 「そうだな」 いつの間にか教室には俺しか残っていなかった。 飛鳥と雨の中歩く、二つの足が水溜まりを踏み音を奏でる。 寮の部屋に帰ってくると飛鳥が上着を脱いだ。 そうか、今日…するって言ってたな、思い出して胸が高鳴る。 昨日一人で慰めていて恥ずかしくなり、さっさと風呂に入ろうと着替えを取りに自室に向かった。 のんびりと飛鳥が後に続く足音が聞こえた。 「飛鳥、先に入るか?」 「…いや」 「そ、そうか…じゃあ俺が先に…」 「そうじゃねぇだろ」 飛鳥は俺の身体に腕を回して後ろから抱き締めてきた。 服はさっきまで風に晒されて冷たいのに体が熱い。 後ろから俺のネクタイを引いて一つ一つゆっくりとボタンを外す。 ぞくぞくと変な気分になり、後ろに少し下がる。 飛鳥が後ろにいてかたいものが俺の尻に当たり顔を赤くする。 まだ脱いでないのに、もうそんなに反応してんのか。 「一緒に入ろうって言ってんだろ、もう少し男の誘い方を勉強しろよ…俺の女なんだから」

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