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第49話

※?視点 カシャッカシャッとシャッターを切る音が耳に響く。 フィルムの向こう側にはターゲットである三条優紀が写り込んでいる。 本人には興味がないがいい値で買ってくれるリピーターがいるからお小遣い稼ぎとしては美味しい。 ただ、最近裸が見たいだの言う変態が増えて困っている。 俺の写真は清いものしか撮らねぇの、隠し撮りだけど… それにいくら三条優紀が美人な顔でも男の裸とか見たくねぇよ。 撮るなら可愛い女子校生とかが良いがさすがに通報されるからやらない。 最近雨が続いていて写真が取れなかったからその分晴れた日に撮っておく。 木の太い枝に座りながら寮から学園の外に続く並木道を仲良さげに並んで歩く三条優紀を撮る。 会話に夢中だからか俺の存在に気付いていないようだ。 そういえば雨の日の時妙に警戒していたな、あの時写真撮らなくて良かった。 三条優紀以外が写真に写り込むと文句を言う奴らがいるから注意してフィルムに三条優紀だけを写し込む。 ふと、カメラのレンズ越しに目線が合った気がした。 カメラを下げると、騒ぎ立てる気はないのかそのまま目を逸らし三条優紀と共に歩いていった。 河原飛鳥、根暗の容姿と反して中身は全然根暗じゃない変な転校生。 撮るなら三条優紀じゃなくコイツの方が面白そうなんだけどなぁ… 初めて見た時はいろんな顔を見てきたが、さすがに驚いた。 そっくりさんかと思ったがあんな顔がごろごろ居たら世の中のモテない男は鬱になるだろう。 …まぁ俺は女の子を絶やした事ないから非モテの気持ちなんて分からないけど… たまたま三条優紀を撮ろうと三条優紀の部屋の前の木の枝に座ってカメラを構えていた。 すると見知らぬ金髪の男が部屋の中にいた。 あれ?事前情報では三条優紀の同室者はあの根暗ではなかっただろうか。 しかもアイツ、STAR RAINの緋色そっくりじゃないか。 まさか緋色?本物?あの根暗が?え、なんで? そういえば隣のクラスにも芸能人がいたな、まさかこんな田舎みたいな男子校に二人も芸能人がいるとは驚きだ。 まぁ緋色が根暗スタイルで学校に通ってるとか女の子が知ったら話のネタとして面白いかもしれない。 とはいえそうなれば変装してるしバレたくない事情でもあるのだろう、なんかややこしい話に巻き込まれたくないし止めておこう。 緋色は知っていたのだろう、俺が写真を撮ってる事に… 自分の正体を自ら晒し、優紀より自分を撮れと言いたげな眼差しでよく俺を見ていた。 そんなにしてまで芸能人さまが守る価値があるのかねぇ、三条優紀に… とりあえず緋色の思惑に乗る気はないので三条優紀を撮り続ける。 「河原飛鳥、ねぇ」 撮った写真を確認して写りが悪いものは消していく。 その中に一枚だけ撮った河原飛鳥の写真がある。 新しいおもちゃを見つけたように頬を緩ませ無邪気に笑う。 からかいがいのありそうなおもちゃ見っけ。 こちらを睨み付ける河原飛鳥の写真を保存して後は全て消した。 今日は良いのが撮れなかったなぁ…三条優紀一人の時の方が撮りやすい。 今日は河原飛鳥が手やら頭やら悪い時には三条優紀の壁みたいにカメラの前に立つから邪魔でしょうがなかった。 まぁただ写真撮るより、妨害を潜り抜けた方が楽しいけど… もう一度カメラを構えてシャッターを押す。 後ろ姿だが三条優紀と河原飛鳥を撮り満足して木の枝から飛び降りた。 今日はこの後デートの約束をしてるから早くいかないとな、女の子って待たされるの嫌がるし… 彼女ではない、数多の女友達の一人とデートなのだ。 男子校は花がなくて楽しみがないから退屈だった。 でも、今後なんか楽しそうな事が起こりそうだと思いながら並木道を歩いた。

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