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第52話
勉強、まぁ家庭教師のバイトをした事あるし…教えた事はある、それが上手いかどうかは相手が決める事だから俺は分からない。
「実はうちのクラスの子がちょっと期末で赤点取りそうでね、補習には出れないらしくて…なら赤点回避してもらわないとと思ってね」
「つまり俺に勉強を見てくれという事ですか?」
先生は顔を明るくして頷く、他のクラスの生徒に頼むほど困ってたのかな。
紫乃達は飛鳥が見るからいいとして、一円にもならないなぁと悩む。
この前は梅雨だったからバイトしたかったんだけど…
俺の他にも頭いい奴で勉強教えるの上手い奴なんてごろごろしてるだろうと断ろうとした。
……しかし言葉に詰まりうぐっと短い悲鳴を上げた。
先生がとても期待に満ちた顔をこちらに向けていた。
そんな顔をされるとはっきりと断れなくなる、顔を引きつらせ苦笑いするしかなかった。
「三条くん、お願いだよ…やってくれる?」
「………………はぁ、分かりました」
どうやら進藤先生はおねだりが上手らしい。
捨てられた子犬のような上目遣いは反則だ。
俺は子犬に負けた、小動物は可愛いと思う。
まぁ毎日勉強を見るわけではないし、勉強会の日にちを決めて空いた日にバイトを入れよう。
夏休みまでの期間だし長くないから時間に縛られる事はそんなないだろう。
そう予定を考えていたら進藤先生は立ち上がった。
「じゃあ早速放課後お願いするよ、何処で待ち合わせにする?」
「…そうですね、図書室の方が静かでいいですね」
「分かった、図書室だね!じゃあそう伝えとくよ」
もう放課後の予定が勉強会になってしまい呆然とするが幸い今日も紫乃達と集まる予定だったからバイトは入れてない。
隣のクラスの副担任だしあまり進藤先生の事を知らなくて、どこか抜けている人なんだなと思った。
俺はいったい誰の勉強を見ればいいのか言わず進藤先生は俺の肩を叩き「よろしくね!」と言い職員室を後にした。
ここに残ってても仕方ないから俺も職員室を出るとそこには心配そうな顔をした紫乃と始がいた。
そういえば二人には「職員室行ってくる」しか言ってなかったな、しかも暗い顔して…
きっと職員室に行く前の俺と同じ事を考えていたのだろうな、俺もそんな顔してたし…
「優紀くん大丈夫?なにか言われた?」
「あー、いや…勉強見てほしいって言われただけだから」
「勉強?」
俺は歩きながら二人に職員室での出来事を話した。
食堂に行く時間ないな、購買でパンでも買うかな。
呼ばれた理由が、隣のクラスの生徒の勉強を見てほしいという内容を二人に話した。
紫乃はホッとした顔をしていて始は「なんだよつまんねー」とけらけら笑っていた。
始、素直になれよ…さっきの心配そうな顔は忘れねぇぞ。
そういえば飛鳥はまだいないのか、二人に聞いたら探していたらしいが見つからなかったと言っていた。
何処に行ったんだ?…まぁ飛鳥なら大丈夫だろうけど…
「でも優紀くんがその子の勉強見るなら僕達は?」
「飛鳥がいるだろ」
「ホットケーキ」
「俺はお前らの母親じゃねーよ」
とか言いつつ、差し入れに甘いもの買ってくるかなと考える。
紫乃は甘いのはあまり好きではないから甘さ控えめの……これじゃあ本当に母親みたいだと苦笑いする。
飛鳥の用事が終わったら来れるように購買で少し多めにパンを買った。
今日は教室で食う事にして、同じく教室で食べている数人がいる教室に入った。
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