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第63話
打ち合わせが終わり、マネージャーに車で送ってもらう。
寮近くまで行ったら誰かに目撃される危険があるから離れた駐車場でかつらを被り寮に向かって歩く。
歩いているとスマホが鳴った。
確認するのは寮に帰ってからにしようと急ぐ。
多分まだ優紀は帰って来ていないだろう。
寮の部屋はやはり真っ暗で玄関の電気を付けて自室に向かう。
再びスマホを開き見てみると登録した覚えがない名前がSNSに表示されていた。
このIDは優紀にしか送ってないが優紀ではないのは分かる。
まぁSNSだし、いろんな奴がやってるしこういう事もあるのかもしれない…何故か友達登録していないのに友達の枠にあるのかは謎だが…
いや、そんな事より気になった事があった。
それはSNSのメッセージだ。
そいつは「君の恋人の浮気現場☆」と腹が立つ内容でその下に写真があった。
それは何処かで優紀と…なんか見た事あるような…忘れたけど男が机に向かってなにかしている。
いやいや、どう見ても参考書が端に見えるし勉強教えてるだけじゃないか?
優紀は頭いいみたいだし、上条達みたいに頼まれただけだろ。
俺は自分に自信があった、それに優紀はそんな事出来る男だとは思えない…とても恋に一途なのは俺だけが知っている。
それだけだとハッと鼻で笑うだけだが、問題は二枚目以降の写真だ。
本棚が見える、ここは図書室なのか高いところに本を返そうとする優紀の上からのアングル。
今日は暑かったのかネクタイを緩めた胸元が開いていて男にしては色が薄いピンクの…
三枚目はかなりの至近距離で撮られていて、いや置いていたのか優紀が背伸びしてシャツから薄いけどちゃんと付いている腹筋…
「アイツ、殺す」
誰かなんて分かっている、あのふざけた男だろう。
何処から俺のSNSを入手したのかは知らない。
俺が浮気現場だって疑わない事を分かっていたからかわざと俺の怒りに触れるような事をする。
そして極めつけは「次は三条優紀くんの生着替え動画!お楽しみに」とメッセージが来た。
俺は明日アイツと会う約束をした。
最後に「重装備で来ないと命の保証はないからな」と送った。
脅しではない、アイツを殴らないと気がすまない。
優紀の乳首が…あの野郎、許さない…
そして優紀が帰ってくる音がして、玄関に向かった。
そして怒りが沈まないし、優紀を見るとムラムラするしで結果優紀を襲った。
「つまり、俺は八つ当たりされたのか?」
「…優紀は悪くねぇのは分かってたんだけどな、悪かった」
「…………で、無理矢理襲った理由もいきなりバスケ部に入った理由もなんとなく分かったが、今日…お前とその人が抱き合ってる姿見たんだけど」
「いくら優紀でもその気持ち悪い勘違いはやめろ、あれは違う」
「…違う?」
翌朝、優紀に悪い事をしてしまったと反省した。
抵抗したからか手首がうっすらと縛られた痕が出来ていた。
優紀が起きるまで傍に居たいが、今日は用事があり早めに学園に行く事にしている。
上条にバスケ部に入ると電話で伝えていて、それなら朝練から少し参加する?という上条の申し出に頷いた。
運動は激しいダンスで慣れているから悪くはないだろう。
そして体育館で俺は軽いゲームをした。
背が一番高い先輩がダンクシュートを決めていたから見よう見まねで俺もやってみた。
するとバスケ部の部員達から大歓声をもらった。
そこまでか?と思ったが悪い気はしなかった。
そして一緒に教室に行こうと言う上条と一緒に教室に向かう。
その間ずっとさっきの話ばかりで苦笑いした。
才能あると言われてもいまいちぴんとこない、ろくにルールも知らないし…俺はただの凡人だよ。
教室には勿論優紀が居て上条と別れて優紀に謝ろうと近付いたが、ふと視線に気付き後ろを振り返るとアイツがニヤニヤ笑いながら手を俺にしか分からないように小さく手を振るから眉をしかめて椅子に座りイヤホンを付ける。
優紀に話しかけるとアイツまた優紀の写真を撮りかねない、まぁ寮一緒だしその時に謝ればいいか。
そして昼休み、俺はアイツを呼び出したから上条の誘いを断りすぐに教室を出た。
「なんだ、浮かない顔してたから浮気仲直りの写真撮れると思ったのに」
「撮らせるかよ」
昨日と同じ場所に行くと先に待っていたのか壁に寄りかかっていた。
俺はまず初めに蹴りを入れた、笑いながらかわされイライラする。
「短気短気~」と煽るアイツの顔面に拳をめり込ませたい。
もう一度殴りかかろうとしたら今度はアイツに壁に押さえつけられた。
睨む俺の耳に唇を寄せた。
正直人生の中で今が一番鳥肌ヤバい。
「この前価値の話をしたよね、俺にとっての価値は河原飛鳥くんにあるんだ…君の写真を素顔のまま自由に撮らせてくれたらもう三条優紀は撮らないよ」
それを聞きハッと笑う。
結局こいつは価値がどうとか言う資格なんてない。
フィルム越しに河原飛鳥ではなく緋色を見ている。
フィルムの向こう側なんてまるで興味がないのだろう……あったとしてもすぐに追い払うが…
俺なんて…STAR RAINがあっても緋色にとっては価値があるだろうが河原飛鳥にとっては何の価値もない。
優紀が居てこその今の俺だ、この男が撮りたいのは俺単体ではなく優紀といる俺なんだ。
本人は気付いていないみたいだな。
「それに気付かなきゃ一生いい写真なんて撮れねぇよ」
「…え?」
「本職のカメラマンになったらまた来いよ、仕事で使ってやるよ」
お前は河原飛鳥ではなく、テレビ越しの緋色でも撮ってろよと足蹴りしてその場を後にした。
それにアイツより俺の方が綺麗に優紀を撮れるし、それだけは譲れない。
俺は貴重な時間を無駄に過ごしたなとため息を吐いた。
まさか優紀が寮に帰宅後優紀に襲われるとはこの時誰も思っていなかった。
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