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第65話
部活も期末勉強で休みになり、俺達はそれぞれの時間を過ごしていた。
飛鳥は紫乃と始の勉強を昼飯の時でも始めた。
飛鳥の勉強はかなりスパルタで勉強しないと飯を食わせてもらえないと嘆いていた。
隣で飯を食うのは気が引けて俺もお預け状態で勉強を見守っていた。
そして放課後は飛鳥に襟を掴まれ二人は連れてかれた。
俺は先生に頼まれて古城に勉強を教えている事を飛鳥に伝えているから飛鳥は分かっていた。
最初は「…古城?どっかで聞いた事が…まぁいいか」と言っていた。
知り合いか?飛鳥が思い出すのを放棄したからそれ以上聞かなかった。
古城と図書室で勉強をする。
最初は俺で大丈夫か不安だったが古城は覚えるのが早いのか教えるのも簡単だった。
「おっ、凄いじゃん…全問正解」
「…ふん、当然だ」
「これなら赤点は免れそうで良かったな」
「っ!?」
俺が作った小テストだけど古城は几帳面な字で全問正解した。
家庭教師していた時も思っていたが教え子が成長するのを見るのは楽しいもんだな。
つい中学生の教え子の時のように頭を撫でると古城は目を丸くした。
そしてみるみる顔を赤くして目を泳がせていた。
おいおい、いくら今が気温差が激しいからって期末で風邪引いて全て台無しにはするなよ。
今日はここまでにするかと参考書を閉じた。
「古城、お前熱があるんじゃないのか?」
「……ちょっ、顔…近っ」
「保健室行くか?」
「い、いいっ!!」
古城は慌てたように立ち上がるからビックリした。
熱を計ろうと額に触ろうとしただけなんだけどな。
余計顔が赤いが本当に大丈夫か?
大丈夫と本人が言うなら無理には言わないけど…
図書室の前で古城と別れようとした。
すると呼び止められて、いつもはそんな事がなかったから驚いた。
「どうした?古城」
「……あ、明日から…期末だよな」
「あぁ、だから今日は早く寝ろよ」
古城は目を泳がせもごもごとしている。
こういう時、なにか俺に言いたいんだよな。
そのくらいなら何となく古城の気持ちが分かってきた。
古城はこうなるとなかなか言わないから「どうかしたか?」と言うと、ズボンのポケットを漁る。
そして俺の前に見せる。
それはスマホだ、これだけじゃ分かるわけないぞ古城…
「えっと…古城?」
「す、スマホ持ってるだろ!?」
「…え?あるけど」
「俺にSNSのID教えろ!」
なんつー潔い上から目線だ。
でも顔はいっぱいいっぱいなのが分かり、可哀想に思いスマホをカバンから取り出す。
まぁIDは減るもんじゃないしな。
交換が終わると古城はほっとしたような顔をしていた。
…俺、そんなに仲良くなったのか?自分ではよく分からない。
古城に手を軽く振り、今度こそ別れた。
俺も帰ったら予習しとこうかな、散々言って俺が赤点になったら洒落にならない。
飛鳥はまだ勉強してるのかと思ってメッセージを送ろうと思っていたが、新着メッセージが来てる事に気付き先にそっちを見た。
『テスト』
それだけが送られてきた。
テストはテストでも普通に一言でも書けばいいのに、考えるのが面倒だったのか?
俺は『了解』とメッセージを送った。
そして飛鳥にもメッセージを送りスマホをカバンに放り込んだ。
寮に向かって歩き出した。
寮の部屋に帰るとリビングに飛鳥がいた。
「もう終わったのか?早いな」
「…あぁ、まぁ後は自習だ」
飛鳥はニヤニヤ笑いながらそう言い、テーブルに頬杖ついてこちらを見ていた。
俺はリビングの端にカバンを置いた。
さっきメッセージではまだ終わるのに時間が掛かると送ってきた。
早めに切り上げたのか?なんでだ?
俺は部屋で予習をするぐらいしか言ってない………あ。
そういえば飛鳥、勉強会が決まった時…なにか言っていたような…
飛鳥はテーブルに置いていたノートを持ち俺に見えるように軽く振る。
「……ガキの勉強会は終わりだ、これから大人の勉強会しようぜ」
「ははっ……そんなにやりたかったのか、それ…」
本当に飛鳥のエロ脳はよく活発に働くな。
予習なら一人より二人の方がやりやすいとは思う。
……しかし、勉強の邪魔はするなよ。
それだけ飛鳥に言うと「まかせろ!」と良い笑顔で言った。
……物凄く不安だ。
カチカチと時計の針が時間を刻む。
もうこのくらいにしようと手を止めた。
「……飛鳥、なんつー顔してんだよ」
「優紀、頭いいんだな」
そんなガッカリしたような声で言うなよ。
テーブルを挟み向かい合う飛鳥にため息を吐く。
お互い問題を出し合って間違ったら問題を出した奴に好きにされるという飛鳥のエロルールでやった。
結果、どちらも間違わず…普通の健全な勉強になった。
飛鳥はこのままだとつまらないと思ったのかわざと間違えようとしていたから俺が「飛鳥が負けたら一日禁欲な」と言ったら真剣になっていた。
そして今の不満げな顔だ、仕方ないなと苦笑いして飛鳥の横に移動する。
「飛鳥、期末が終わったらしような」
「………当たり前だ」
当たり前なのか、まぁ飛鳥だからいっか。
期末期間中は飛鳥には禁欲してもらわないとな、腰が痛くてテストに集中出来なかったら嫌だからな。
ーーー
テスト期間が終わり、結果が書かれた紙が壁に張り出された。
俺は赤点じゃなかったら順位とか気にしないから普段は見ないが、緊張した顔の紫乃と始により連行された。
途中でトイレに行こうとしていた飛鳥も連れてかれた。
紙の前では多くの生徒達が集まり順位に笑みを見せたり落ち込んだりしていた。
ついでだから俺も見とくかなと自分の名前を探す。
13位か、まぁまぁ上か…紫乃と始は赤点の名前のところだけ確認している。
順位は100位しか載らないからな、ランクインしてるとは思っていないのだろう。
何となく流し見で順位を見ていく。
「おっ、飛鳥一位じゃん凄いな」
「……あ?あぁ」
飛鳥は順位を見ていないのかイライラした顔で紫乃と始を見ていた。
二人は赤点に名前がないのを確認して喜んでいた。
赤点は名前が貼り出されるから嫌だよな、ちゃんと勉強しろって事なんだろうけど…
勉強を教えてくれた飛鳥と喜びを分かち合おうと飛び付こうとしたら避けられた。
そして急いでその場を後にした。
そうか、トイレの時連行されたんだしな。
紫乃と始が飛鳥を追いかけていくのを眺めながらもう一度順位を見る。
期末で満点なんて聞いた事ないな……ん?
飛鳥の名前しか見てなかった一位がもう一人いるんだな。
『立花 俊太 』と名前が書かれていた。
隣のクラスか、ふーん。
俺は昼飯どうするか紫乃にSNSのメッセージを送りのんびり廊下を歩いた。
飛鳥大変だな、と苦笑いした。
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