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第2話

俺とハジメは同じ部屋に住んでいる。いわゆるルームシェアだ。大学進学をきっかけに安いアパートを借りてこの生活を始めた。 片田舎から都会に出たという高揚感。 これから始まる生活への期待感。 そして与えられた自由。 人で溢れたこのデカい街で俺たちを知る者は誰もいないのだ。 引っ越し初日。ダンボールだらけの雑然とした部屋を見渡しながらハジメは言った。 「今日から2人きり、だな」 ベランダから差し込む光に照らされた彼を、不意に抱きたいと思った。 今までは手を繋ぎ、キスをすることで精一杯だったのに。照れや恥が欲をかき消していたのだと気がついた。 今日から2人だけで暮らせるという高揚感が俺を変えてしまったのか。まだベッドを組み立てていないというのに、俺はハジメに迫ったのだった。 翌朝、背中の痛みで目が覚めた。 フローリングに脱ぎ散らかした服を見て、床でするんじゃなかったなと後悔の念に駆られた。 散乱したダンボールや付けかけのカーテンを放置してするセックスはとても興奮したのだが。 隣で寝ていたはずのハジメが見当たら無い。慌てて部屋を見渡すと、バスルームの灯りが点いているのに気がついた。 ─ハジメは怒っていないだろうか。 そんな不安を覚える。部屋は全く片付いておらず、何より段取りを踏まずにいきなり事に及んでしまったのだ。しかも冷たい床で。 全裸のまま散らかった服を寄せ集めていると、浴室からハジメが顔を出した。 「体、冷えただろ。シャワー浴びろよ」 「分かった。……その、ごめんな。急にあんなこと……」 謝る俺を見てハジメはふっと微笑んだ。 「あれはあれで興奮したから別に気にするな」 そう言うや否やまた浴室に戻った。再びシャワーの音が聞こえる。 ─怒っていなくて良かった。 安心感と同時に、俺の中で欲がふつふつと沸くのを感じたのだった。

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