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第4話

毎月10日に決まってすることがある。それは生放送だ。しかし放送といっても大層なものではない。ただ俺たちが駄弁るだけ。 それでも、毎週更新している実況動画と同じくらい視聴者とコメントが付く。 放送開始の21時まで余裕があるからか、ハジメはまだバスルームから戻ってこない。 しかしシャワーの音が全く聞こえないので、のぼせているんじゃ無いかと心配になり風呂場に向かう。 廊下へのドアを開けると、ハジメが目の前に立っていた。 「なんだ、もう上がっていたのか。のぼせたかと思った」 「心配かけてごめん。僕は準備出来たからそろそろ始めようか」 ソファに腰掛ける。今から1時間ほどハジメと話せると思うとわくわくした。最近お互い忙しく、2人で過ごす時間をなかなか確保出来なかったからだ。 マイクのスイッチに手をかける。するとハジメが俺の服の裾を引っ張った。 「僕の話しって面白いのかな」 「当たり前だろ。じゃなきゃこんなに人が集まらないぞ。皆んな楽しみに待ってるはずだ」 「……そうだよな。じゃあ、やろうか」 俺は頷く。そしてマイクの電源を入れる。 21時ジャスト。生放送がスタートした。 ───────────────────── 続々と増える視聴者数に目まぐるしく更新されるコメント。 俺たちに対するメッセージや質問が次々に流れてくる。 それらに気紛れに返事をしつつ、雑談をしているとあっという間に時間が経つ。 俺は視聴者から送られる質問に答えるのが好きだった。 『2人はなんでゲーム実況始めたの?』 「始めた理由か。俺は目立つこととゲームが好きだから始めた。ハジメは?」 「そうだな、僕はカズに誘われて。カズみたいに面白い理由じゃなくてごめん」 改めて馬鹿馬鹿しい理由で始めたな、と自分でも思う。 それでも俺は実況動画を上げることが好きだ。多数の視線や歓声を浴びることは嫌な気分じゃ無いからな。 ちらりと時計に目をやると、もう23時を回っていた。もうじきハジメが眠る時間だ。 「楽しいけどそろそろお終い。次回の生放送もよろしくな」

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