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第15話 あの子の好きなものが欲しい
うちの父さんも母さんも、俺をとても心配してくれているのは分かった。
でもやっぱり世間体のことばかりだった。
「みっちゃん、ごめんなさいね。……ママが余計なことをしたから」
「……そうだね」
俺はやけに乾いていた。
窮屈な隔離病棟で、やっと監視の目から外れて大部屋に移った。
角地さんは気持ち悪いし、どんな人かまだ詳しくは分からないけど、車椅子のお爺さんとゆりちゃんは普通に話してくれる。
特にゆりちゃんは無邪気で可愛い。
たかがお菓子のために俺にキスしてきたり、俺のペニスが気になって一緒にお風呂に入ったり……。
希恋はおっぱいがFカップで大きくて魅力的だったけど、今はゆりちゃんの無邪気さのほうが気になる。
「ママね、みっちゃんの為に色々用意したんだけれど、パーカーの紐は首を絞められるから駄目、みっちゃんの好きなグラビアも健全じゃないから駄目、CDは長く入院している人が欲しがるから駄目。みんな駄目なの」
そりゃそうだろう、この病院は外部から全てシャットアウトしてある。
テレビすらホールに一台しかないのには俺も驚いた。
「三成、父さんが今読んでいる本とラジオを今貸してやろう」
父さんは『いかに老後を楽して過ごすか』という胡散臭い本と、いつも相撲を聞くために持ち歩いている小型のラジオを貸してくれた。
「せめてスマホも大丈夫だったら、いつでもみっちゃんと連絡が出来るのに」
「これは俺の自業自得だから」
これは建前。
本当はむちゃくちゃに責めたい……けど出来なかった。
「みっちゃん……、今欲しいもの!!差し入れママするから。明日も明後日も」
毎日来たって、一週間に30分しか会えないのに、なんでこんなにするんだ。
「……チョコレートとジュース」
つい言葉が出ていた。
すると母さんは笑顔で、
「今度こそみっちゃんの役に立つからね。ママだもの」
そう言って着替えと身の回りのものを置いて、差し入れを買いに父さんと母さんは面会室を出た。
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