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第16話 『禁句』

差し入れで新しく入ってきた品物は、面会室で看護師さんにチェックを受けながら衣装ケースにいれるらしく、俺は暴力サド看護師Aさんにチェックを受けながら整理をしていた。 「あんたの下着、随分と面積が狭いわね。最近の若者はあんたみたいなの?」 「失礼な、これはビキニと言って一番カッコイイ形なんだよ」 俺と暴力サド看護師Aのやり取りが面白かったらしく、杉原のお母さんは笑顔で見ていた。 こうしてみると、杉原と全然似てないんだなぁと思った。 すると面会室のドアがガチャリと開き、暴力サド看護師BとCが一人の少年を囲みながら入ってきた。 「……亮、いい子にしてた?」 「なぁに?母さん、俺はいつもいい子デショ」 俺は何か違和感を感じていた。 『亮』話してくれるとても穏やかな表情をしていたけど、何かがおかしかった。 「母さん、今日は義兄貴も来てるって聞いてたけど、いないじゃん。折角だから本物の笹倉の話聞きたかったのに……」 笹倉? 「笹倉って、まさか『笹倉 叶』さんのこと?」 俺は杉原が一番可愛がっている後輩の名前を出した。 すると『亮』は人が変わったような、嫌な含み笑いをして、 「……あんたも『笹倉の毒牙に掛かった可哀想な人?』なわけ」 「は?」 「笹倉は男のくせに綺麗で可愛くて、……でも誰も見ないはずだったんだっ!!なのに……、兄貴に!!畜生っ!!!!笹倉も殺して俺も死んでやるっ」 『亮』はそう言って暴れだした。 意外な展開に俺は茫然と驚いて見ているだけだった。 杉原のお母さんは、『亮』の足にしがみついて、必死に止めていた。 確か杉原兄は柔道の授業が得意だった。 こんなときになんでいないんだよっ、と俺も『亮』の片腕を抑え込んだ。 しかしその腕を反対側の手で引っ掛かれた。 「いてっ、こらぁ大人しくしろ」 それが不幸中の幸い、骨折した左腕じゃなくて右腕で助かった。 『杉原 亮』は一体どうしちゃったんだっ?!

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